植物図鑑

エゾノハクサンイチゲ「北海道の花」

エゾノハクサンイチゲ

名称:エゾノハクサンイチゲ(蝦夷白山一華)
学名:Anemone narcissiflora ssp. sachalinensis
分類:キンポウゲ科 イチリンソウ属

北海道から東北地方北部に分布している多年草です。

高山植物の中でもポピュラーな種で、亜高山~高山の湿った草原で見られ、各地で見事な群落を形成しています。

北海道には分布していませんが、本州中部地方以北から東北地方にはエゾがつかない「ハクサンイチゲ(A.n.ssp.nipponica)」が分布しています。

名前の由来

北海道に産する「ハクサンイチゲ」というのが名前の由来です。

「ハクサンイチゲ」は石川県の白山で発見されたイチゲという事から来ています。

また学名の、「narcissiflora」は、スイセン(Narcissus)のような花、という意味があります。

広義のハクサンイチゲ

広義のハクサンイチゲ(Anemone narcissiflora)は、北アメリカ北西部とユーラシア原産で、とても変異が多く、少なくとも12種類ほどが一般的に知られています。

日本では主に以下の2種が知られています。

  • ハクサンイチゲ(A.n.ssp.nipponica)
  • 分布は本州中部以北~東北

  • エゾノハクサンイチゲ(A. n. ssp. sachalinensis)
  • 分布は東北~北海道

広義」とは、種が細分化されたり、識別が困難な場合に、複数の種をまとめて呼ぶ際に使われる言葉です。

ハクサンイチゲはそれだけ多種多様な亜種、変種、品種があり、区別が難しいという事でしょうか。

ちなみに、学名にある「ssp」は「subspecies」の略で、亜種という意味です。

亜種は「subsp」と略する場合もあります。

ここが変種の場合は「ver」、品種の場合は「」になったりします。

今回のハクサンイチゲに関しては、広義のハクサンイチゲ(Anemone narcissiflora)と本州に生息するハクサンイチゲ(Anemone narcissiflora ssp. nipponica)が同じ和名なので、少々ややこしい感じになっています。

エゾノハクサンイチゲの特徴

北海道での花期は6月~8月、高さが15~40㎝ほどで、白い花を咲かせます。

主に亜高山~高山の湿った草地を好んで生息しています。

芽生えの時期から見て行きましょう。

高山では雪渓が溶けた跡などを探すと、芽生えたばかりのエゾノハクサンイチゲを見かける機会があります。

この個体は花茎も太く、長軟毛(ちょうなんもう)が密生しているのが可愛らしいですね。

ずんぐりむっくりした見た目です。

先ほどと別個体で、花の蕾が見えています。

苞葉(ほうよう)が開き、中の蕾が見えています。

エゾノハクサンイチゲは、花を1~5個ほど付けます。

また花のつぼみは紫色を帯びる場合もあります。

こちらの個体群は先ほど見られたつぼみの紫色がまったくありません。

つぼみの紫色が濃い個体もありました。

この紫色の部分はがく片なので、開花すると花の裏側になるのであまり目立ちません。

1つ目の花が開花した個体です。

花が開くと紫色の部分は薄くなりますが、少し色が残っているのが確認出来ます。

こちらは紫色が入っていない個体の開花したてです。

ちょうど満開のエゾノハクサンイチゲです。

アップで見てみます。

白い花弁のように見えているのはがく片で、「5~8枚」とほとんどの図鑑にかかれていますが、写真にはがく片が4枚の花も見えています。

花の中心部に雌しべ群、それを取り囲むように雄しべ群が見えています。

雄しべの数は通常40~80個との事で、この写真の個体は数えたら50個程度の雄しべがあり、雌しべは8個程でした。

花茎には柄の無い茎葉(けいよう)が4枚輪生しています。

この「エゾノハクサンイチゲ」は他のイチリンソウ属の花と同様に、発達した地下茎を持って、根出葉と茎葉の2種類の葉があります。

エゾノハクサンイチゲはたくさんの根出葉を出します。

根出葉の数などに触れていた図鑑はなかったので、今度個人的に調べてみます。

花茎(かけい)や葉柄(ようへい)の長軟毛が良く目立ちますが、茎葉のふちにも毛が生えています。

がく片が脱落したばかりの、初期の果実です。

集合化は痩果(そうか)で、縁取りが黒くなるのですが、まだこの段階でははっきりしませんね。

ハクサンイチゲとの違い

本州に分布する、別亜種のハクサンイチゲ(A.n.ssp.nipponica)との違いを下記にまとめてみました。

  • エゾノハクサンイチゲはがく片の幅が広く、先が鈍頭
  • エゾノハクサンイチゲは花柄が短い
  • エゾノハクサンイチゲは葉先があまり尖らない
ハクサンイチゲ(北アルプス白馬岳)
ハクサンイチゲ(北アルプス薬師岳)
エゾノハクサンイチゲ

北アルプスで撮影した「ハクサンイチゲ」2種類とエゾノハクサンイチゲを見比べてみましたが、正直あまり違いが良く分かりませんね。

山形県の月山(がっさん)では両種が混在しているらしいですが、現地のガイドさんはしっかり見分けられるのでしょうか。

現状は手持ちの写真素材不足なので、今度北アルプスなどに行く機会があれば新たに撮影して記事を追加したいと思います。

変わり花

北海道の日本海側のとある山で、エゾノハクサンイチゲの八重咲品種が見られます。

花色もクリーム色に近いので、一見別のお花の様に見えます。

がく片が細く、色は緑色~クリーム色。

先ほどまで見ていたエゾノハクサンイチゲと比べ、雄しべが少なくなっているのがわかりますでしょうか??

これは弁化(べんか)と言って、雄しべの一部ががく片化して、八重咲となっています。

私がエゾノハクサンイチゲの変わり花を見た事があるのは、今のところこの群落だけです。

エゾノハクサンイチゲが咲く風景

エゾノハクサンイチゲが咲く風景は個人的にとても大好きです。

初夏の風を浴びて、一面に咲き誇っている姿はとても北海道の山らしい景色です。

ここからはエゾノハクサンイチゲが咲く写真をいくつかご紹介したいと思います。

暑寒別岳 箸別コース

暑寒別岳(しょかんべつだけ)では、シナノキンバイと一緒に一面に咲いていました。

花期は6月下旬~7月初旬。

大千軒岳

大千軒岳(だいせんげんだけ)では、ミヤマキンバイなどとお花畑を形成していました。

花期は6月初旬。

芦別岳

芦別岳では大きな群落はありませんが、稜線上に咲いています。

花期は6月中旬頃。

大雪山 永山岳

大雪山の永山岳では、エゾノハクサンイチゲのお花畑が見られます。

花期は7月初旬。

イチリンソウ属の花

北海道には以下の9種のイチリンソウ属の花が分布しています。

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