植物図鑑

ヒダカエンレイソウ「北海道の花」

ヒダカエンレイソウとは

名称:ヒダカエンレイソウ(日高延齢草)
学名:Trillium x miyabeanum
分類:シュロソウ科 エンレイソウ属

分布は北海道、東北、本州中部で、低山から亜高山の明るい森林内に生育します。

本種はエンレイソウ(父)とミヤマエンレイソウ(母)との種間雑種で、両種が生育している地域で見られます。

名前の由来

日高山脈で最初に見つかったエンレイソウという事から、名前が付けられました。

エンレイソウの由来は、中国では漢名で延齢草根(えんれいそうこん)と言う薬草として使われており、エンレイソウ(延齢草)の名前がつけられました。

ヒダカエンレイソウの特徴

5.29 千歳市

親のエンレイソウやミヤマエンレイソウと比べ、大型になるのが特徴です。

花をアップで見て行きましょう。

最大の特徴である赤い花弁は0枚~3枚で、大きさも不揃いな事が多いです。

3枚あるがく片は緑色です。

いつも参考にさせていただいている梅沢先生の図鑑によると、「がく片の先が鋭く尖る」事が特徴と書かれています。

今回見たヒダカエンレイソウの株では、がく片が内側に反り、確かに尖っているように見えました。

ただ、よく似たコジマエンレイソウでもがく片の先が尖っているものを見た事があるので、見分けの決定打にはならなそうです。

側面のアップです。

こちらは花弁が0枚のヒダカエンレイソウです。

近くに花弁のあるヒダカエンレイソウがあるのでわかりますが、赤い花弁が無いとなかなか見つけにくいです。

スプリングエフェメラルの1種

ヒダカエンレイソウは、春先に花をつけ、夏には地上部を枯らして、後は春まで地下で過ごすスプリングエフェメラル(春植物)と呼ばれる植物です。

スプリングエフェメラルとは、直訳すると「春のはかないもの」、「春の短い命」という意味で、「春の妖精」とも呼ばれています。

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コジマエンレイソウとの違い

コジマエンレイソウ

コジマエンレイソウも赤い花弁を持ち、見た目で区別するのがなかなか難しいとされています。

見分けのポイントを下記にまとめてみました。

  • 生育地(分布)
  • 花色の違い

コジマエンレイソウの分布はサハリンと石狩以南の北海道南部で、比較的海岸に近い場所で見られます。

北海道外で見たとすれば、ヒダカエンレイソウで間違いなさそうです。

ヒダカエンレイソウはエンレイソウとミヤマエンレイソウの雑種なので、両種が混生している場所に生育しているのが特徴です。

また私の見た印象ですが、花色の濃さに違いがありました。

コジマエンレイソウが濃い赤色(深紅)の花びらを持つのに対し、ヒダカエンレイソウはピンクに近い、薄めの赤色でした。

コジマエンレイソウはたくさん見ていますが、ヒダカエンレイソウは見かける機会が少なく、サンプル数が少ないので、花色の違いはあくまで個人的な印象という事でご承知おき下さい。

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