イチリンソウ属の中でも、特に小さく繊細な花を咲かせる「ヒメイチゲ」をご紹介いたします。
私が以前職場だった大雪山では、雪解け後1番に咲く「ショウジョウバカマ」の次に早く咲くのが、この「ヒメイチゲ」でした。
大雪山のまだ寒い春に、「ヒメイチゲ」が開花するのをいつも楽しみにしていたので、個人的にはとても思い出深い花の一つです。
ヒメイチゲとは
名称:ヒメイチゲ(姫一華)
学名:Anemone debilis
分類:キンポウゲ科 イチリンソウ属
分布は北海道、近畿地方以北で、アジアではシベリア東部、中国(北部・東北地方)、朝鮮、樺太、千島に分布しています。
低地から亜高山で見られ、わりと雪解け後の早い時期に見られます。
名前の由来
ヒメイチゲはイチリンソウ属の中でも特に小さく、写真を撮るのもピント合わせが大変です。
名前はその繊細な容姿から名前がついたと言われています。
イチゲ(一華)は、一つの茎に一つの花、という意味です。
ヒメイチゲの特徴
高さは5㎝~15㎝ほどの多年草で、一つの茎に一つの花を咲かせます。
上の写真は、別々の花がピッタリ寄り添うように咲いていたのが面白くて撮ってみました。
わりと1株、2株とポツンと咲いていることもありますが、周囲にいくつか群生している場合もあります。
花の直径は1㎝ほど、細くとても繊細な印象を受ける花です。
花弁状のがく片はふつう5個で、その中に多数の雄しべと雌しべがあります。
同じく似ている「エゾイチゲ」のがく片は5~7個ですが、この「ヒメイチゲ」のがく片もまれに6~7個の個体もあるそうです。
根出葉と茎葉の形がぜんぜん違う
「ヒメイチゲ」が面白いのは、この根出葉(こんしゅつよう)と茎葉(けいよう)の形が異なる事です。
ヒメイチゲは地下茎(ちかけい)を持ち、花茎(かけい)と別に、離れたところに花をつけない根出葉があります。
これは知識として知っていないと、見ても同じ花の葉だと分からないと思います。
茎葉は柄があり、3個輪生して、3全裂する披針形です。
小葉には不規則な鋸歯(きょし)がありますが、鋸歯がまったく見られない場合もあります。
根出葉(こんしゅつよう)は、広卵形(こうらんけい)の3小葉から構成され、花茎(かけい)と別に0個~1個が出ます。
花茎(かけい)の根元近くにある場合もありますが、結構離れている場合もあるので、「ヒメイチゲ」を見かけた場合はぜひ探してみて下さい。
イチリンソウ属の花
北海道には以下の9種のイチリンソウ属の花が分布しています。
- キクザキイチゲ
- ウラホロイチゲ
- アズマイチゲ
- フタマタイチゲ
- ニリンソウ
- サンリンソウ
- ヒメイチゲ
- エゾイチゲ
- エゾノハクサンイチゲ
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