今回は道南の大千軒岳を紹介させていただきます。
2023年10月31日に消防隊員3名が襲われるショッキングな事件があり、そのため世間の印象がとても悪くなった山だと思います。
個人的に好きな山の一つなので、今回はその悪いイメージを払拭できるようにご紹介します。
大千軒岳とは
大千軒岳(だいせんげんだけ)とは、道南の上ノ国町と松前町の境界にある標高1071.9mの山です。
標高こそ高くないですが、道南エリアきっての花の名山として知られ、登山ルートは松前町側に「旧道コース」、「新道コース」、福島町側に「千軒コース(知内川コース)」の合計3コースが知られています。
山深い山域のため、たまにアクセス道路が通行止めになっている事があります。
登山の際は下記まで確認してから向かうとよいでしょう。
【参考リンク】
- 渡島総合振興局(松前上川ルート※旧道、新道へアクセスする道路)
- 檜山森林管理署(千軒コース)
- 多種多様な花が見られるオススメコース。事前に予習して登りましょう。
- 距離も標高差もある健脚者向き。千軒平まで頑張れば、あとは天国のようなお花畑が続きます。
- 山深く熊の事故もあったので、ヒグマ対策は入念に。可能であれば単独での入山は避けましょう。
アクセス
今回は一番距離の長い千軒(知内川)コースについて紹介します。
Googleマップではこの場所までしか道と認識していませんが、上記のポイントの奥に大千軒岳知内川コースの登山口「奥二股」があります。
国道228号の福島町千軒から松前方向に少し進んだあたりに、大千軒岳登山口の看板と、奥二股6kmの看板があるのが目印です。
GPSログ
距離約12.7㎞、累積標高登り約1080m、往復約10時間程の行程でした。
地図では分かりにくいですが、序盤の沢沿いの高巻き道はアップダウンがあり、往復共に体力が削られました。
登山道の様子(取材日:2021/6/2)
森の中からスタートです。
写真を撮り忘れたのですが、最初に水量のある渡渉があるので、長靴を使ってデポしていくのも良いかと思います。
しばらくは知内川沿いの登山道を進んで行きます。
イワカガミが咲いていました。
この時期の大千軒は最初から最後まで花を見ながら歩けるコースです。
まだ蕾でしたが、北海道では松前半島でしか分布していないヤグルマソウが見られました。
コケイランもまだ咲き始めの株がいくつか見られます。
千軒金山遺構の看板が出てきました。
江戸時代にはこの辺りで砂金が見つかり、ゴールドラッシュで賑わった過去があります。
諸説ありますが、金脈を探し当てて一攫千金を狙う採掘者の人家がたくさん(千軒)あった事が山名の由来とも言われています。
道南エリアで良く見られる黒いカタツムリ「ブドウマイマイ」がいました。
あまり標高の稼げない知内川沿いのルートですが、細かいアップダウンがあります。
オドリコソウが咲いていました。
地味な花ですが、紫色の斑点がチャームポイントです。
広い河原までやってきました。
名前の通り広い河原で、ここで知内川を一度渡渉して左岸沿いを進んでいきます。
水辺に多いオオバミゾホオズキです。
倒木の上にザラエノヒトヨタケがありました。
ピンクテープを目印に、飛び石で渡渉できました。
金山番所に到着です。
ここには金掘管理の為に、松前藩直轄の番所が設置されていました。
今現在はここにキリシタン殉教者の慰霊碑があり、過去にあったキリシタン迫害への祈りの場になっています。
訪れた時は十字架が補修中だったのか、代わりの木の棒が設置されていました。
金山番所の看板です。
知内川沿いの道が終わり、次第に傾斜のある道になっていきます。
オオサクラソウが咲いていました。
明るく開けた河原の千軒銀座に到着です。
千軒銀座からは頂上稜線が見えました。
ここから稜線まで標高差約500mの急登が始まります。
北海道では分布の局所的なサンリンソウが咲いていました。
ミネカエデの花。
急な登りですが、花を見ながらバテないようにゆっくり登っていきます。
ウラジロヨウラクの花。
道内の分布は渡島半島です。
ぐんぐん標高を上げていきますが、まだまだ森の中。
途中にある「休み台」で小休止。
ツバメオモトの花が咲いていました。
マタタビの花は葉の下についています。
ちょっと珍しいタケシマランがありました。
道外では普通に見られますが、北海道では見る機会がほとんどありません。
分岐して見た目はオオバっぽいのですが葉は茎を抱かず、花はヒメっぽい感じです。
シラネアオイの花が咲いていました。
きつい登りが続きますが、花が癒してくれます。
北海道西部の多雪地帯に分布するフギレオオバキスミレが咲いていました。
オオバキスミレの固有変種です。
頂上稜線が近くなってきました。
日本海側に分布するヒメヤシャブシの葉です。
ヒメヤシャブシの垂れ下がる長い雄花序。
ガンバレ岩まで来るとあともう少しで稜線です。
千軒平に到着しました。
ミヤマキンバイのお花畑と十字架の向こうに大千軒岳の山頂が見えています。
千軒平にはシラネアオイのお花畑もあります。
シラネアオイの葉が展開する前の丸まっている姿がなんとも可愛らしいです。
ミヤマキンバイのお花畑はなかなか見ごたえがありました。
ここまで来ればあとは山頂まで気持ちの良いフラワーハイキングです。
エゾノハクサンイチゲもたくさん咲いていました。
写真では分かりにくいですが、道の至る所で花々が咲いています。
エゾノハクサンイチゲとミヤマキンバイ。
ミヤマキンバイ、エゾノハクサンイチゲ、ミヤマアズマギクのフラワーロード。
ミヤマオダマキはまだ開花前のプルーンのような姿。
同じような写真ばかりですが、エゾノハクサンイチゲ。
ハクサンチドリも咲いていました。
大千軒岳の山頂に到着しました。
これが道内最古の一等三角点。
道内最古の一等三角点のレリーフです。
明治29年7月に北海道で最初の三角点が道南の三座に設置されました。
厳密に言うと大千軒岳(点名:千軒岳)は明治29年7月18日で2番目に古く、北海道で一番古いのが古部丸山(点名:古部岳)で明治29年7月4日が選点日です。
残りの八幡岳(点名:八幡岳)が明治29年7月23日で三番目です。
津軽海峡の向こうに、津軽半島から西に突き出す小泊岬と、青森県最高峰の岩木山が見えました。
登って来た千軒平方面には、前千軒岳と奥には津軽山地の山々が見えています。
函館方面には、当別丸山と、七ツ岳の山々が見えました。
こちらが七ツ岳の主峰。
林道崩壊で登りにくい山になってしまいました。
日本海側には松前大島が浮かんでいました。
大島より近い位置に、松前小島も見えています。
北には少し残雪のある遊楽部岳と白水岳が見えました。
景色を堪能したので帰ります。
帰りも綺麗なお花畑ゾーンを通るので、なかなか足が前に進みません。
3つ並んだミヤマオダマキ。
オオサクラソウ。
樹林帯でも見られましたが稜線上にもあります。
名残惜しい稜線歩きでした。
帰路の樹林帯には、行きでは気づかなかったサルメンエビネが咲いていました。
木洩れ日が当たって発光している妖精の様です。
これも行きは見つけられなかった、ヒロハテンナンショウ。
分布は日本海側です。
まとめ
最後まで御覧いただき、ありがとうございました。
余談ですが、以前に山の雑誌「岳人」2022年6月号に大千軒岳の記事を担当させていただいた事があるので、気になる方はバックナンバーから御覧下さい。
別リンク:岳人 バックナンバー
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