ミヤマエンレイソウとは
名称:ミヤマエンレイソウ(深山延齢草)
学名:Trillium tschonoskii
分類:シュロソウ科 エンレイソウ属
分布は北海道、本州、四国、九州で、山地の広葉樹林内に生育します。
名前の由来
ミヤマ(深山)は標高の高い山で咲くことから。(※本種は低標高でも普通に見られます。)
中国ではエンレイソウの根茎を「延齢草根(えんれいそうこん)」と言う薬草として使われており、エンレイソウ(延齢草)の名前がつけられました。
ミヤマエンレイソウの特徴
ミヤマエンレイソウの芽生えです。
3枚の葉につつまれた真ん中に、つぼみが見えています。
徐々に葉が開いていき、中の白い花弁が見えてきました。
開花直後のミヤマエンレイソウ。
まだ花が開ききっていない状態です。
ミヤマエンレイソウの特徴は、⓵白い花弁を持つこと、⓶花が横向きorやや俯き気味で咲くことです。
白い花弁を付けるエンレイソウ属の仲間には、「オオバナノエンレイソウ」、「カワユエンレイソウ」、「シラオイエンレイソウ」などが知られますが、ミヤマエンレイソウが一番サイズ感が小さい印象です。
誤解のないように記載しますが、上の写真の個体は特に小さめです。
白い花弁が3枚、がく片も3枚、葉っぱも3枚、雄しべは6個(3の倍数)と、とても「3」にこだわりを持っている花です。
エンレイソウ属の学名の、「Trillium」 は「3のユリ」を意味し、花、がく、葉が3枚になる事が由来となっています。
花弁が淡紅色のものを品種「ムラサキエンレイソウ(Trillium tschonoskii f. violaceum)」と言います。
が、過去の図鑑には記載があったのですが最新の図鑑ではムラサキエンレイソウの記述が無くなっています。
ゆっくりとした1面を持つ
ミヤマエンレイソウは、春先に花をつけてあっという間に枯れてしまう「生き急いでいる」イメージがありますが、片方ではゆっくりとした一面も持っています。
本種も含め、エンレイソウ属の仲間は、開花までに10年から15年程かかると言われています。
その後、最低で10年は毎年花をつけるので、寿命は20~50年ほどと考えられています。
スプリングエフェメラルの1種
ミヤマエンレイソウは、春先に花をつけ、夏には地上部を枯らして、後は春まで地下で過ごすスプリングエフェメラル(春植物)と呼ばれる植物です。
スプリングエフェメラルとは、直訳すると「春のはかないもの」、「春の短い命」という意味で、「春の妖精」とも呼ばれています。
オオバナノエンレイソウとの違い
同じく白い花をつける近似種「オオバナノエンレイソウ」との違いは以下の通りです。
- ミヤマエンレイソウは花が横向きor斜め下向きにつく
- オオバナノエンレイソウは子房の先が紫褐色になる
- オオバナノエンレイソウは葯(やく)が花糸(かし)の3倍の長さになる
またオオバナノエンレイソウは全体的に大型で、ミヤマエンレイソウは比べるとやや小型なので、見た目の印象もちょっと違います。
またミヤマエンレイソウは北海道から本州、四国、九州と分布が広いですが、オオバナノエンレイソウの分布は北海道、東北の北部となっています。
おすすめの山野草図鑑
北海道の草花 Wild Flowers of Hokkaido
著:梅沢 俊
北海道の植物図鑑では御馴染みの梅沢先生の図鑑です。
かなり大きめの図鑑ですが、網羅している植物数が多く、新分類体系APGⅢ,Ⅳに準拠しています。
古い植物図鑑をお持ちという方は分類が変わっているので、更新するならこの本がオススメです。
私の山のガイド活動にも欠かせないパートナーとなっています。
その他のエンレイソウ属の花
のんびりと記事が追加出来たらこちらに記載していきます。
登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。
顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。
もしよろしければ、一緒に山歩きを楽しんでみませんか?