今回は「サクラソウ」をご紹介したいと思います。
春に見られるサクラソウの1種ですが、北海道内の分布には偏りがあるので、意外と目にした事の無い方も多いのではないかと思います。
サクラソウとは
名称:サクラソウ(桜草)
学名:Primula sieboldii
分類:サクラソウ科サクラソウ属
北海道(胆振・日高)、本州、九州に分布する多年草で、国外では、朝鮮半島から中国東北部にも分布しています。
北海道での花期は5月~6月。
江戸時代の中ごろから栽培された「古典園芸植物」の一つで、荒川の原野に野生するサクラソウから本格的な栽培の歴史が始まったとされています。
またサクラソウ属の花は世界で400種ほどあり、花の形や草姿に大きな違いがないので、広義の「サクラソウ」として総称されることもあるので、注意が必要です。
北海道の分布は広くなく、※北はむかわ町二宮、南は新ひだか町静内静内霊園付近とされています。
※出典:北方山野草会28号
名前の由来
花の形が桜に似る事が名前の由来です。
個人的には、花の色以外はあまり似ていない気がします。
サクラソウの特徴
サクラソウの花は高さが15㎝~30㎝ほど。
森の中で咲いていると結構な存在感があります。
他のサクラソウの花は中心部が黄色くなる種も多いですが、このサクラソウは白1色。
花喉の穴も小さく、なんだか小顔というか、のっぺらぼうというか、そんな印象を受ける花です。
花序(かじょ)の付き方は「散形花序」で、わりと片側に偏って咲くのも多い印象です。
花付きの良い株は、綺麗な球形の花序になります。
写真の個体はてっぺんの花がまだ蕾なので、頭頂部だけ禿げているような見た目ですが・・・。
名前の由来で、桜に似ていると記述しましたが、一番の違いは「合弁花」と「離弁花」という事です。
サクラソウの花は下部が筒状になり、途中で平開して5裂します。
さらに5裂した裂片はさらに2浅裂します。
花びらが1枚1枚散っていく桜は「離弁花」で、サクラソウの花は「合弁花」なので花がまるごと散っていきます。
【合弁花と離弁花】
- 「離弁花(りべんか)」とは花びらが1枚1枚離れた花
- 「合弁花(ごうべんか)」とは花びらが根元でくっついている花
花茎(かけい)には、白い軟毛が生えています。
それに対し、花柄(かへい)には毛がありません。
がくは5裂し、苞(ほう)は披針形(ひしんけい)です。
次に葉を見て行きましょう。
地中にある根茎(こんけい)から5~6枚の葉を根生します。
葉は葉脈によってシワシワな感じで、写真だとわかりにくいですが基部は心形です。
葉をアップで見てみましょう。
主脈の付近には、まばらに軟毛が生えています。
葉の縁は、「円頭で不規則な鈍い重鋸歯(じゅうきょし)」と図鑑でありましたが、確かに大小不揃いの鋸歯になっています。
葉の葉柄(ようへい)には、白い軟毛がびっしり生えていました。
森の中で群生するサクラソウはなかなか見ごたえがあります。
道内での分布が偏っていることもあり、見られると嬉しい花の一つです。
オオバナノエンレイソウとサクラソウ。
北海道ではだいたい花期が同じ(5~6月)で、分布も重なっている両種です。
長花柱花と短花柱花
サクラソウを含むサクラソウ属の花は、異形花柱花(いけいかちゅうか)として知られ、長花柱花(ちょうかちゅうか)と短花柱花(たんかちゅうか)の2つの型があります。
- 長花柱花(Pin型)は、雌しべが長く、雄しべが短い
- 短花柱花(Thrum型)は、雌しべが短く、雄しべが長い
まずは短花柱花から見て行きましょう。
上の写真を見ると、花の中心部に雄しべの葯(やく)が5個見えています。
短花柱花の雌しべは短いので、中に埋もれてしまって見る事が出来ません。
次に長花柱花を見てみましょう。
花の中心部に雌しべの柱頭が見えています。
長花柱花の雄しべは短いので、中に埋もれてしまい見る事が出来ません。
それぞれ違うタイプの花の花粉が受粉しないと結実しないとされています。
異形花柱性(いけいかちゅうせい)は、自家受粉や近親交配を避け、効率よく他家受粉するための仕組みとなっています。
北海道のサクラソウ属の花
北海道には以下の9種のサクラソウ属の花が分布しています。
- サクラソウ
- オオサクラソウ
- クリンソウ
- ヒダカイワザクラ
- テシオコザクラ
- エゾコザクラ
- ソラチコザクラ
- ユキワリコザクラ
- ユウバリコザクラ
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