晩夏の夕張岳でたくさんの「ミヤマアケボノソウ」を見る事が出来ましたので、今回ご紹介したいと思います。
なんとも言えない花色が素敵な高山植物です。
ミヤマアケボノソウとは
名称:ミヤマアケボノソウ(深山曙草)
学名:Swertia perennis subsp. cuspidata
分類:リンドウ科 センブリ属
高さ15㎝~30㎝の多年草で、高山の湿った草地や岩地、湿原に生息しています。
今回撮影した夕張岳では、湿原の付近でたくさん見られました。
北海道では大雪山、夕張山地、日高山脈で見られ、本州での分布は早池峰山、八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス、北アルプスです。
本種は、北半球の高地や寒冷地に広く分布するSwertia perennisの亜種で、日本固有種になります。
名前の由来
和名は「深山に咲くアケボノソウ」という意味で、同属のアケボノソウに似て、より高山に生息している事が名前の由来となっています。
ちなみに「アケボノソウ」の和名は、白い花弁の斑点を夜明けの星空に見立てた事に由来します。
ミヤマアケボノソウはリンドウ科センブリ属の花ですが、ここの名前の由来も抑えておきましょう。
- センブリ⇒非常に苦い植物で、煎じて「千回振出してもまだ苦い」
- リンドウ⇒漢字で書くと竜胆。古くから知られる熊胆よりさらに苦いという意味で竜胆
どちらも苦いことが和名の由来となっています。
ミヤマアケボノソウの特徴
花は暗紫色で茎の上部に1~10個の花を付けます。
上の写真はつぼみと咲いているのが混じっていますが、花の咲く順番は規則性が無さそうです。
花期は7月下旬~9月、この写真の個体は8月17日の夕張岳で撮影しました。
後ろに映っているイワイチョウの葉が黄色に色づいているので、なんとなく季節感がわかりますね。
花をアップで見てみましょう。
尖った花弁とがく片は共に5個、花糸と葯から構成されている雄しべも5個あります。
特徴的なのは、花弁の青い筋と斑点、またその根元に2つの蜜腺溝(みつせんこう)です。
密腺溝には毛が生えていますが、同じセンブリ属の花にはこの蜜線溝に毛が無いタイプの種もあります。
まっすぐ直立する茎は4稜あり、四角柱のような茎がとても特徴的です。
茎につく葉は対生(たいせい)し、リンドウ科らしい鋸歯の無い葉を付けます。
根出葉は大きな長楕円形の形をしています。
こちらはまだ花を開く前のミヤマアケボノソウ。
花弁の隙間から雄しべが飛び出ているのがとても面白いですね。
黄色い葯(やく)がとても目立っています。
他の花には無いこの独特な花色がなんとも魅力的です。
今回の「ミヤマアケボノソウ」の撮影日は2020年8月17日。
夕張岳の木道付近でたくさん見る事が出来ました。
登山者の多い「シラネアオイ」や「ユウバリソウ」の時期と違って、静かな山歩きを楽しむことが出来ました。
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