植物図鑑

シラネアオイ「北海道の花」

今回はシラネアオイをご紹介したいと思います。

大ぶりで華やかな花をつけるので、山の中で出会うと嬉しい花の一つです。

シラネアオイとは

名称:シラネアオイ(白根葵)
学名:Glaucidium palmatum
分類:キンポウゲ科 シラネアオイ属

北海道~本州中部以北に分布し、高さが20㎝~50cmになる多年草です。

分類はシラネアオイ科として分ける事も多く、日本固有種1属1種です。

花期は4月下旬~6月。

北海道では主に山地の明るい樹林帯などで良く見られますが、亜高山の草地などでも見られます。

7.2 暑寒別岳

私が今まで見た中で一番標高の高いエリアに咲いていた個体は、この暑寒別岳の稜線上で見かけたシラネアオイです。

標高約1450m、シナノキンバイに混ざって咲いていました。

名前の由来

日光白根山に多く、花がタチアオイに似ることからシラネアオイ(白根葵)と名づけられました。

シラネアオイの特徴

シラネアオイは大型の綺麗な花をつけるので、とてもファンの多い山野草です。

また花をつけている期間も比較的長いので、長く楽しめるのもありがたいポイントです。

つぼみ~花期~果実期

シラネアオイの芽出しは、小さな拳のような丸まった葉が出てくるので、とても目立ちます。

葉にくるまれた花のつぼみが隙間から顔を出しています。

少し角度を変えて正面から。

このシラネアオイの姿を初めて見つけた時には、もう大興奮でした。

花の時期も良いですが、この葉に包まっている時期の方が個人的には好きです。

千軒平(せんげんだいら)で見かけた、多数のシラネアオイです。

なんだか高級なマスクメロンのような網目模様がとても美しいですね。

葉が開くと、中からつぼみが出てきます。

花が咲く前の、このつぼみの時期は紫が濃い色をしています。

こちらは花咲く一歩手前。

こちらはわりと開花したてのフレッシュな個体です。

花の色は淡い青紫色で、とても品のある雰囲気です。

シラネアオイは白花の個体も見られます。

たまに見られるので、自生地に行った際はぜひ探してみて下さい。

花びらのように見えるがく片は4枚あります。

花の中心部には、2個の雌しべと、その周辺を取り囲むように多数の雄しべがあります。

雌しべが4個ある変わり花

夕張岳で、雌しべが4個ある変わった個体を見つけました。

これは例外的ですが、どのような種になるか見てみたかったです。

雄性期のシラネアオイ

シラネアオイは雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)という特徴があり、開花直後は雄しべのみが成熟して花粉を放出しています。

またシラネアオイの花は蜜を出しませんが、花粉を虫に提供する虫媒花です。

この時期は雌しべが多数の雄しべの中に埋もれて、見る事が出来ません。

雌性期のシラネアオイ

やがて雌しべが成熟すると、多数の雄しべ群の中から2個の雌しべが顔を出し、花粉を受け取るようになります。

このような特徴を、雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)と言い、他家受粉の機会を増やす意味があります。

雄性先熟は主に虫媒花で多く見られる特徴で、成熟する時期をずらす事で、自家受粉を防ぎ、他家受粉の確立を高める効果があります。

反対に、先に雌しべが成熟し、その後雄しべが成熟することは、雌性先熟と言い、主に風媒花で見られる特徴です。

こちらはがく片と雄しべが脱落した初期の果実。

この後、膨らんで2個が合着した、いびつな台形状になります。

果期のシラネアオイです。

シラネアオイの果実は、袋果(たいか)と呼ばれる袋のような形状をしています。

種子が熟すと、果実が裂けて開き、種子を外に飛ばします。

写真の個体は果実の中に1粒の種が残っていますが、見えますでしょうか?

種の周囲に翼が付いて、風に乗って飛んでいきやすいような形状になっています。

特徴的な3枚の葉

シラネアオイは3枚の葉を付けるのが特徴です。

花の根元にある⓵苞葉(ほうよう)は柄が無く、小さめ。

下にある2枚(⓶、⓷)は互生で、葉柄(ようへい)があり、苞葉に比べ大きな葉になります。

こちらは葉が小さめで、鋸歯(きょし)もあまり深く切れ込まないタイプの苞葉です。

大きさも花より小さめですね。

こちらの苞葉は対照的に、鋸歯(きょし)の切れ込みが先ほどのタイプより深く切れ込んで、サイズもやや大きめです。

このように、葉の切れ込みや形、大きさなどは個体差がけっこうあります。

下の2枚の葉は、とても大きな葉が付きます。

この大きく切れ込んだ掌状(しょうじょう)の葉はとても特徴的です。

この葉の形を覚えておくと、花が付いていなくても、同定しやすいです。

群生することも


シラネアオイは根茎(こんけい)が伸びるので、群生することも珍しくありません。

大型の花が群生するので、とても見ごたえのあるお花畑を形成します。

樹林帯や稜線上など、様々な場所で見られるのも嬉しいポイントです。

こちらは伊達紋別岳の登山道、花咲く稜線の登山道はとっても気持ちが良いものです。

登山道を彩ってくれる素敵な花の一つです。

がく片が薄いので、光が差し込むとまた雰囲気が良いですね。

6.23 石原平

夕張岳の登山道沿いに咲く、シラネアオイの群生です。

私の知る限り、この石原平のシラネアオイの群生が一番見ごたえのあると思っています。

6.23 石原平

少しアップで撮影すると、フレームいっぱいのシラネアオイになります。

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