クルマバツクバネソウとは
名称:クルマバツクバネソウ(車葉衝羽根草)
学名:Paris verticillata
分類:シュロソウ科 ツクバネソウ属
高さが20~30cmになる多年草です。
分布は北海道~九州と広く、北海道では低地~低山の林内に生育しています。
国外の分布は、朝鮮、中国、千島、樺太、シベリアなど。
北海道での花期は5月~6月。
名前の由来
ツクバネソウに似ていて、葉が輪生する姿が車輪状に見える事が名前の由来です。
ツクバネとは衝く羽(羽子)で、 花や実の形が羽根つきの羽(羽子)に似ているところから。
クルマバツクバネソウの特徴
クルマバツクバネソウの一番の特徴は、柄の無い6~8枚の葉が輪生することです。
葉の形は倒披針形で、先がとがります。
花よりつい葉っぱの方に目がいってしまいます。
横走する細い地下茎から、円柱状の茎が直立します。
クルマバツクバネソウは、花の作りも面白い感じです。
花弁のように見える黄緑色のがく片は4個、花柱(かちゅう)は4個です。
雄しべは8個で、葯隔(やくかく)が突き抜けているのがとても特徴的です。
※葯(やく)は雄しべの中で花粉を生成して収納する部分ですが、普通2室からなる半葯2個と、半葯をつなぐ葯隔(やくかく)と呼ばれる組織からできています。
また葉やがく片が地味な色をしているおかげか、葯(やく)の黄色がとても目立って見える感じがします。
先ほどは真上から撮ったアップだったので、今度は横からのアップです。
先ほどの写真では不明瞭だった、花弁(内花被片)が映っています。
クルマバツクバネソウの花弁は4個で、細く糸状になって垂れ下がるのが特徴です。
クルマバツクバネソウの子房は、熟す前から黒っぽい色をしているのも特徴の一つです。
こちらは伊達紋別岳の登山道で見つけたクルマバツクバネソウ。
地味な花ですが、群生している姿はなかなか見事でした。
ツクバネソウとの違い
「ツクバネソウとクルマバツクバネソウの違いは、葉の枚数でしょ?」
そんな風に思っている時期が私にもありましたが、ここまで読んでくれた方は結構な違いがある事に気づいてると思います。
両種の違いを以下にまとめてみました。
- ツクバネソウの葉は4枚(たまに5枚~6枚)、クルマバツクバネソウは6~8枚
- クルマバツクバネソウは葯隔(やくかく)が突き抜ける
- ツクバネソウは花弁が無い、クルマバツクバネソウは糸状の花弁が4個
- ツクバネソウの子房は緑色、クルマバツクバネソウの子房は黒色
- ツクバネソウの葉は長楕円形、クルマバツクバネソウは倒披針形
葉の枚数で見分けるのが分かりやすいですが、たまに変異がある個体もあるのがややこしい所です。
他に分かりやすいのは、雄しべの葯隔(やくかく)や子房の色だと思います。
それでは、下の写真の個体はツクバネソウか、クルマバツクバネソウかどちらでしょうか?
葉は5枚ですが、黒い子房、垂れ下がった花弁、突き抜けた葯隔(やくかく)、
正解はクルマバツクバネソウでした。
というか、写真を見比べているうちにあまり似ていない気がしてきましたね。
クルマバツクバネソウの枯れ方
神居尻山Aコースの樹林帯で、様々な枯れかけの「クルマバツクバネソウ」が見られたので、ご紹介いたします。
徐々に緑が少なくなっていきます。
葉は大部分が色が変わってきました。
葉は全て紫っぽくなり、欠け始めました。
まだがく片は緑色です。
がく片も緑が失われ、まるで燃え尽きたような姿ですね。
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