今回は北八ヶ岳の最高峰、「天狗岳」を登ってきました。
北八ヶ岳周辺の森は苔がとても美しかったので、登山道の様子も併せてご紹介させていただきます。
八ヶ岳とは
私も北海道の人間なので、山を始めた頃は八ヶ岳(やつがたけ)と言う山があるものだと思っていましたが、長野県から山梨県へと南北に連なる山々の総称で、特定の一峰を指す言葉ではありません。
大雪山なんかと同じですね。
名前の由来は、八つの峰が集まっている、あるいは八百万(やおよろず)の神といわれるよう、たくさんの山々があることから。
北八ヶ岳と南八ヶ岳
南北30kmに連なる八ヶ岳は、夏沢峠(なつざわとうげ)を境にして、北八ヶ岳(きたやつがたけ)と南八ヶ岳(みなみやつがたけ)に分けられます。
南八ヶ岳は最高峰の赤岳(2,899m)を含め、切り立った急峻な山々が多く、岩稜の多い山域になります。
日本百名山で言うところの八ヶ岳は、この南八ヶ岳を指しています。
南八ヶ岳とは対照的に、北八ヶ岳は稜線上も含め樹林帯が多く、湖沼(こしょう)が点在し、苔の美しい森が広がっています。
北八ヶ岳の最高峰は天狗岳(2646m)で、南八ヶ岳に比べて、やや標高が低くなっています。
天狗岳以北の北八ヶ岳は高山帯の岩場が少なくなり、針葉樹林が中心の山々になっていきます。
アクセス
今回は麦草峠から黒百合ヒュッテ泊で天狗岳を目指す行程で歩きました。
麦草峠には公共駐車場とトイレがあります。
GPSログ
初日は麦草峠から丸山、高見石小屋、中山を経由して黒百合ヒュッテで泊まります。
距離は5.5km、のんびりお昼休憩も含め4時間~5時間程度の行程でした。
翌日は黒百合ヒュッテからスタートして天狗の奥庭を通り、東天狗、西天狗を踏んで、にゅう、白駒池を経由して麦草峠へ戻ります。
距離9.4㎞、8時間程度(休憩込み)の行程でした。
登山道の様子(21/08/23・24)
まずは麦草峠からスタート。
この日はあまり天気が良くありませんでした。
歩き始めてすぐにある「麦草ヒュッテ」さん。
クガイソウがまだ少し咲き残っていました。
シラビソの森を歩いていきます。
苔の森は下草がうるさくないので、傘スタイルで問題無く歩けます。
逆に雨で良かったとも思えるこの苔の森の美しさ。
南八ヶ岳に比べて人も多くなく、静かな雰囲気も良かったです。
所々、コケの案内看板が設置されていますが、写真を見てもどれだかさっぱり同定出来ません。
というか看板の近くにこの「チシマシッポゴケ」が無い気がします。
雨なので苔が生き生きとしています。
この写真内だけでも数種類の苔がある事が分かると思います。
写真中央の立っているのは、地衣類(ちいるい)の「ジョウゴゴケ」。
トゲトゲの「ハリブキ」。
北海道のハリブキは葉に刺(とげ)が無いorここまで目立たないので、最初見た時は別種かと思いました。
展望の無い丸山山頂に到着。
丸山から下って高見石小屋(たかみいしごや)を目指します。
まるで苔の森で雨宿りしているかのような「ギンリョウソウモドキ」が見られました。
苔の中でも分かりやすかったのがこの「ムツデチョウチンゴケ」。
大きな葉っぱが輪生する姿がとても特徴的でした。
この胞子体が6つ付くから「六手提灯苔」という名前らしいですが、多くは1~2個しか付かないようです。
高見石小屋に到着。
初日は時間にゆとりのある行程なので、のんびり休憩していきます。
高見石小屋の名物はこの揚げパン。
きなこ、ココア、抹茶、チーズ、黒ゴマの5種類から好きな味を二つ選びます。
小屋のすぐ裏手にある高見石(たかみいし)は、樹林帯の多い北八ヶ岳エリアの中でも展望がある場所です。
あいにくの展望でしたが、近くの白駒池(しらこまいけ)が見られました。
高見石小屋から中山を目指して歩きます。
途中で出てきた「おこじょの森」看板。
そしてやっぱり「クロゴケ」はこの看板の近くに無い気がします・・・。
どでかいキノコを発見!
これは「オオダイアシベニイグチ」というキノコ。
まるで卓球のラケットのような見た目です。
裏はこんな感じです。
かさの裏面はイグチ科特有のスポンジ状。柄の上部は赤色。
名前のオオダイは、日本百名山にも選ばれている大台ケ原(おおだいがはら)が名前の由来になっています。
中山山頂はたくさんのケルンがあって、展望も良さそうな場所ですが、やっぱりガスガスでした。
中山峠に向けて下っていきます。
崖地形が目立つ稲子岳(いなごだけ)を左手に見ながら進みます。
中山峠に到着。
少し下ると黒百合ヒュッテです。
黒百合ヒュッテに到着。
すのこが設置された広々としたテン場でした。
なかなか趣のある外観です。
築60年経過して老朽化が進み、一部改装工事が行われていました。
小屋には電波がありませんが、ちょっと登山道を上がると電波が拾えます。
今回は個室に泊まってみました。
窓から東天狗が見える素敵な個室でした。
ここで1日目は無事に終了。
翌日、天狗の奥庭を通って天狗岳を目指します。
正面左が東天狗、右手が西天狗(天狗岳)になります。
この辺り一帯は「天狗の奥庭(てんぐのおくにわ)」という場所で、岩がゴロゴロしています。
遠くに御嶽山(おんたけさん)が雲に霞んで見えていました。
昨日はあまり展望が無かったので、景色があるだけありがたいです。
花期は終盤でしたが、トウヤクリンドウが多く見られました。
見るとやはり北海道のクモイリンドウとは別種だと思える程に印象が違います。
浅間山(あさまやま)と四阿山(あずまやさん)が見えました。
どちらの山も、長野県と群馬県の県境に位置している山になります。
浅間山は活火山なので、山頂の上に見えているのは噴煙でしょうか?
四阿山は日本百名山にも選ばれている山です。
東天狗分岐に到着。
振り返ると、今回は行かなかった蓼科山方面の山々が見えています。
茶臼山の手前に昨日スタートした麦草峠があるような位置関係です。
「コバノコゴメグサ」が咲いていました。
このコゴメグサの仲間は半寄生植物で、イネ科植物などに寄生するそうです。
東天狗の山頂に到着しました。
爆裂火口のある硫黄岳や最高峰の赤岳を始めとした南八ヶ岳の展望が広がっています。
眼下の樹海に、「しらびそ小屋」と「ミドリ池」を見つけました。
南アルプス方面は雲が多く、ややすっきりしない展望でした。
天狗岳本峰(西天狗)へ向けて歩きます。
途中で窓岩っぽい岩を発見。
天狗岳山頂は広いスペースがありました。
山頂標柱はこんな感じです。
ちなみに、天狗岳は日本二百名山に選ばれています。
南八ヶ岳方面の展望をご紹介します!
先ほどの東天狗岳では見られなかった根石岳山荘(ねいしだけさんそう)が見えています。
根石岳山荘の右手にある山は箕冠山(みかぶりやま)と言いますが、地形図には載っていません。
編笠岳(あみがさだけ)の奥にある山は、南アルプスの鳳凰三山です。
金峰山方面は雲がもくもくでしたが、山頂にある五丈石(ごじょういわ)が遠くからでも良く目立ちます。
天気の良い日は北アルプス方面も綺麗に見えるのですが、この日は残念ながら見えずでした。
西天狗へ戻って、次は「にゅう」を目指します。
昔はあったのであろう山頂を踏まないトラバース道がいくつか山肌に見られます。
稜線上を歩いていきます。
稲子岳(いなごだけ)の南壁が良く目立っています。
途中で見かけた「ダチョウ」のような苔アート。
「にゅう」は近くなってようやく見えました。
岩場で展望の良さそうな山頂です。
にゅうの山頂看板は小さかった。
それでも、今回の山旅では一番賑わっているピークでした。
硫黄岳や天狗岳方面は曇ってしまいましたが、遠くに富士山が見られました。
次は白駒池(しらこまいけ)を目指して歩きます。
うちの妻の目当ては、白駒山荘の豪華な2000円ランチ。
途中で見かけた看板。
「にゅう」が「ニュー」になっていました。
さらに「中山峠」と続いているから「NEW中山峠」になっています。
ややこしい案内看板・・・。
今度は「にう」になっています。
表記が安定しませんね。
この辺りは「にゅうの森」。
白駒湿原には木道が設置されています。
白駒池のほとりに到着。
まさかの「乳(にゅう)」だったとは。
ちょっと気になって名前の由来を調べたのですが、
- 稲を刈り取った後、円柱形や円錐形に積み上げる稲わらの「にう」
- 山の姿が「乳」に似ている
など、「にゅう」の語源には諸説あるそうです。
通りで案内看板の表記がブレブレだった訳ですね。
北海道のおっぱい山としては「西クマネシリ岳・ピリベツ岳」が有名ですが、このようにおっぱい形の山に「乳」を表す語が入るのは、実は世界中の様々な地域で見られる現象です。
白駒池周辺は観光の方も多いエリアでした。
白駒荘に到着!
楽しみにしていた2000円ランチを頼もうとしたところ、平日でメニューを制限しているとの事で、「おでん」、「肉うどん」、「カレーうどんの3種」しか頼めないと言われてしまいました・・・。
かなりショックを受けていたうちの妻ですが、この頼んだカレーうどんも十分に美味しかったです。
剣先スコップの形をしたスプーンも雰囲気良いですね。
次回こそはランチを食べたい所ですが、北海道からまたここに来る機会あるのだろうか・・・。
白駒山荘から駐車場方面は整備状況がとても良く歩きやすい道でした。
麦草峠への道の途中に現れた「白駒の奥庭」。
黒曜の森を抜けると間もなくゴールの麦草峠になります。
下山後に麓から見た八ヶ岳。
朝こそいい天気でしたが、なかなかすっきり晴れない2日間でした。
まとめ
- 麦草峠から天狗岳を目指すと苔の森の美しさも味わえてお得。
- 天狗岳は展望も良く、登りやすい良い山でした。
- 白駒山荘のランチなど、平日はメニューを制限している可能性があるので、事前に問い合わせましょう。食の恨みは恐ろしい・・・。
今回は初めて訪れた北八ヶ岳エリアでしたが、南八ヶ岳に劣らず素敵な山域でした。
最後まで御覧いただき、ありがとうございました。
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