今回は南八ヶ岳~北八ヶ岳と縦走してきたので、ご紹介したいと思います。
全山縦走ではありませんが、南八ヶ岳と北八ヶ岳の両方の雰囲気を満喫できる良いコースでした。
八ヶ岳とは
八ヶ岳は長野県から山梨県へと南北に連なる山々の総称で、夏沢峠を境に北八ヶ岳と南八ヶ岳に分けられます。
今回は荒々しい岩稜帯が続く南八ヶ岳から苔の森が美しい北八ヶ岳まで縦走してきました。
歩行ルート
今回は希望者が多かったため、2回に分けてお客様をご案内してきました。
初日は美濃戸から文三郎尾根を通り、赤岳経由で赤岳天望荘へ(1班は地蔵尾根経由で真っすぐ小屋へ)。
2日目は赤岳~横岳~硫黄岳~夏沢峠~根石岳山荘まで。
3日目は根石岳~天狗岳~にゅう~白駒池という行程です。
美濃戸~赤岳~赤岳天望荘(取材日:2022/6/5)
今回は別日程で2班に分けて歩いたので、それぞれ天気の良い方を採用してご紹介していきます。
1日目は美濃戸から赤岳を目指しました。
この時期に登ったのは、樹林帯で見られる『ホテイラン』が目当てでした。
ここの自生地はしっかりと保護活動をされていて、踏み荒らされないようにロープが張られています。
しばらくは樹林帯の歩きやすい登山道を進んで行きます。
行者小屋が近くなると、樹林の間から横岳の荒々しい稜線が見えてきます。
北海道の山には少ない、荒々しい岩稜が良く目立ちます。
行者小屋(ぎょうじゃごや)からは、文三郎尾根(ぶんざぶろうおね)経由で赤岳山頂を目指します。
荒々しい横岳となだらかな山容の硫黄岳が見えてきました。
すぐ隣の阿弥陀岳(あみだだけ)も良く目立ちます。
山頂直下の鎖場は斜度もあるので慎重に登っていきます。
登山道沿いには可愛らしいレリーフが。
山頂到着後、赤岳天望荘へ下って1日目が終了です。
赤岳~横岳~硫黄岳~根石岳山荘(取材日:2022/6/1)
初日に天気が悪かった1班は、2日目に赤岳山頂を目指しました。
宿泊した赤岳天望荘からは、朝焼けに染まる阿弥陀岳(あみだだけ)が綺麗に見られました。
赤岳も一瞬ですが、文字通り赤く染まっています。
背後には富士山も見えています。
朝食後、赤岳山頂を目指して登っていきます。
スタートしてすぐ鎖場になるので、慎重に進みます。
荷物は小屋にデポしたので、身軽な装備でアタックします。
この日は快晴でとても遠望の利く日でした。
山頂から見られた山々を順番にご紹介していきます。
まずは北八ヶ岳方面の展望です。
北八ヶ岳の北端にある蓼科山(たてしなやま)は、諏訪富士(すわふじ)の別名もあります。
その奥にある妙高山、焼山、火打山は新潟県の山で、頸城三山(くびきさんざん)と呼ばれています。
高妻山(たかつまやま)がちょうど新潟県と長野県の県境という位置関係です。
次に南側を見ていきましょう。
赤岳山頂から尾根続きの権現岳の向こうに、南アルプスの山々が見えています。
次に西側、独立峰で分かりやすい山容の御嶽山(おんたけさん)が綺麗にそびえています。
阿弥陀岳の奥に、茅野市から諏訪市の街並みと、北アルプスの乗鞍岳(のりくらだけ)が見えています。
奥の白い山は、石川県と岐阜県の県境にある白山です。
北アルプスをアップで見ていきましょう。
大キレットと槍ヶ岳がとても良く目立つので、それを目印に山座同定すると分かりやすいです。
少し手前の稜線に位置する、蝶ヶ岳(ちょうがたけ)や常念岳(じょうねんだけ)は山肌の雪が少ないのがとても特徴的ですね。
北アルプス北部の白馬岳まで良く見えています。
このあたりは鹿島槍ヶ岳が双耳峰で良く目立つピークなので、山座同定に役に立ちます。
剱岳の横に立山があるはずなのですが、写真が見切れてしまって残念でした。
南アルプス北端の入笠山(にゅうかさやま)の向こうに、中央アルプスの山々が綺麗に見えています。
富士山はどこから見ても綺麗な山容で分かりやすいです。
東側には奥秩父の山々が見えています。
金峰山(きんぷさん)が分かりやすく、山頂部に『五丈岩』と呼ばれる巨大な岩があるのが特徴です。
金峰山(きんぷさん)、瑞牆山(みずがきやま)、大菩薩嶺(だいぼさつれい)、甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)はいずれも日本百名山に選ばれているので、ぜひ覚えておきましょう。
たっぷり景色を堪能できた赤岳山頂でした。
一度赤岳天望荘まで戻って荷物を回収して、横岳方面に進んで行きます。
横岳の岩稜帯では様々な花が見られました。
まずは割れ目に咲いていた『クモマナズナ』。
『オヤマノエンドウ』も綺麗な紫色で良く目立っています。
本種は北海道には分布していませんが、変種の『エゾオヤマノエンドウ』が大雪山に分布しています。
崖を見下ろすように咲いていたのは、『ツクモグサ』。
本州では八ヶ岳と白馬岳でしか見られない貴重な花の一つです。
オヤマノエンドウ(紫)とミヤマキンバイ(黄)、右下の小判型の葉はこの後に咲く「チョウノスケソウ」です。
キバナシャクナゲも咲いていました。
阿弥陀岳や大同心をバックに歩く参加者のみなさま。
横岳はいくつものピークの連なりですが、奥の院のピークに横岳山頂の看板が設置されています。
奥の院からの下り、カニの横ばいと呼ばれる箇所があります。
写真だと高度感満点に見えますが、距離も短く足場や鎖がしっかりしているので意外とあっさり通過出来ます。
たくさんケルンの積まれた硫黄岳を登っていきます。
もうここまでくれば危険個所は無いので、少し気が楽になります。
硫黄岳登頂後は夏沢峠に向けて下ります。
正面に見えている双耳峰の天狗岳は明日に登る予定です。
下り始めると、硫黄岳の爆裂火口側が見えてきました。
反対から見ると穏やかな山容ですが、こちらから見るととても迫力があります。
意外と標高差もあり、登山道もあまり歩きやすくないので、夏沢峠までは結構疲れる下りでした。
夏沢峠に到着です。
ここが一般的に南八ヶ岳と北八ヶ岳の境界とされており、ヒュッテ夏沢と山びこ荘の2件の山小屋があります。
夏沢峠からは岩の道から土の道に変わり、とても歩きやすくなります。
良く目を凝らしながら歩くと、林床に咲く『ウスギオウレン』の小さな花が目につきました。
箕冠山(みかぶりやま)まで30~40分程登り、少し下って根石岳山荘で2日目は終了です。
写真左が天狗岳で、右が根石岳、その手前に根石岳山荘に下っていく分岐(看板の所)があります。
根石岳山荘~天狗岳~にゅう~白駒池(2022/6/2)
3日目、まずは根石岳山頂まで登ります。
山頂からは正面に硫黄岳、その右手に赤岳も見えました。
天狗岳までは岩がごろごろした登山道を進んで行きます。
東天狗岳山頂に荷物を置いて、西天狗岳はピストンします。
西天狗岳山頂の方が4m程高く、黒百合ヒュッテや天狗の奥庭などの岩がゴロゴロした風景を見下ろす事が出来ます。
縦走路の途中から振り返って東天狗岳(左)と西天狗岳(右)。
途中、『ウソ』のつがいが登山道上で見られました。
しばらくの間、登山道の先を飛んで案内してくれました。
今回最後のピーク、『にゅう』は山頂直下でようやく姿を現してくれました。
咲き始めのコイワカガミも発見。
にゅうの山頂では、北八ヶ岳の蓼科山(たてしなやま)、北横岳(きたよこだけ)や下山する白駒池が綺麗に見えました。
木製のまな板に、マジックで手書きしたような山頂看板が可愛かったです。
全山縦走ではありませんが、八ヶ岳を満喫する3日間のオススメコースとなりました。
まとめ
- ホテイランとツクモグサが見られるのは6月1週目頃。
- この時期は気温が0度近辺まで冷え込む事もあるので、防寒対策は必須。
- 南八ヶ岳は岩場&鎖場が多いので、慎重に通過しよう。
ヘルメットは今回悩んで持って行かなかったのですが、赤岳に関しては着用している方が多かった印象です。
八ヶ岳エリアは長野県のヘルメット推奨地域には入っていませんが、赤岳や横岳は岩場が多いので、ヘルメットは有効だと思います。
また今回はホテイランとツクモグサが目当てだったので、開山祭前の入山となりましたが、この時期は天候が崩れると0度近くまで下がる事もあります。
何度か足を運んでいる八ヶ岳ですが、山小屋も混んでいなく、登山者も少ない時期なので、今回は良い日付の設定だったと思いました。
【今回お世話になった山小屋さん】
☆赤岳天望荘さん
➡ホームページ
寝具に使い捨てシーツやカバーなどを使い、食事も使い捨て容器で、コロナの感染対策をしっかりされている山小屋です。
2班目は悪天候で丸一日動けなかった事もあり、大変お世話になりました。
☆根石岳山荘さん
➡ホームページ
自家製の味噌汁がとても美味しく、おかわり出来るのがとても良かったです!
2班目は悪天候で泊まる事が出来なかったので、大変残念でした。
登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。
顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。
もしよろしければ、一緒に山歩きを楽しんでみませんか?