植物図鑑

コアツモリソウ「北海道の花」

今回は「コアツモリソウ」をご紹介したいと思います。

アツモリソウ属の中で一番小さく、可愛らしいお花です、

コアツモリソウとは

名称:コアツモリソウ(小敦盛草)
学名:Cypripedium debile
分類:ラン科アツモリソウ属

北海道(南西部)、本州中部以北、四国(高知県)、九州(熊本県)に分布する多年草です。

国外では台湾や中国にも分布しています。

名前の由来

アツモリソウに似た姿ですが、花がとても小さい事が名前の由来となっています。

花の小ささもありますが、葉の下で隠れるように咲くので、開花時期でもあまり目立ちません。

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コアツモリソウの特徴

高さは10㎝~20㎝ほど、2枚の葉が向き合って付き、その下に花があります。

北海道での花期は5月下旬~6月上旬頃。

花は1㎝ほどで小さいですが、しっかりとアツモリソウ属の花の形をしています。

袋状の唇弁には暗紫色の縦筋が入り、側花弁の根元近くも暗紫色が入っているのがチャームポイントですね。

最初見た時はこのように俯いて咲いているので、花の裏側しか見えませんでした。

通常ラン科の花は3個のがく片、3個の花弁で構成されていますが、アツモリソウ属の花は3個あるがく片の内、側がく片2個が合着して1個になるのが特徴的です。

また唇弁(しんべん)の暗紫色の縦筋は途中で途切れていますね。

アツモリソウ属の花はポリネーター(訪花昆虫)をその特徴的な袋状の唇弁(しんべん)に誘い込みます。

訪れた訪花昆虫は、唇弁の穴に落ち、上部に設置された2か所の穴からしか出られず、花から脱出する際に葯の近くを通るので、花粉を体に付けます。

柱頭は見えていませんが、仮雄しべの下面にあります。

写真に写っている淡黄色の部分が葯(やく)で、アツモリソウ属の花粉は粘液で塊を形成し、花粉塊を作らないとされています。

コアツモリソウの葉は2枚が向き合って付くので、とても特徴的です。

花は葉の下に隠れるので目立ちませんが、この特徴的な葉を覚えれば見つけやすくなります。

葉はやや厚めで光沢があります。

円心形の葉で、先はやや尖ります。

なぜこのように俯いて咲く姿を選んだのでしょうか。

虫達にとってもあまり見つけやすい姿とは思えません。

花を優しく持ち上げてみました。

手の大きさと比較すると、この花の小ささが良く分かると思います。

生え際の様子。

今回観察したポイントでは、葉が互生したものが2株ほど見られました。

通常は対生した葉なので、ちょっと見た目の印象が変わります。

互生したコアツモリソウもなかなか素敵な立ち姿でした。

葉は向かい合うようにならず、90度ずれた方向に向いています。

そこそこ群生した姿が見られましたが、花が下を向く為、なかなか撮影が上手くいきません。

コアツモリソウを撮影するには、ひたすら地面に這いつくばって下から撮影するしかありませんでした。

斜面を利用出来れば上手く撮影出来るのですが、なかなか写真を撮るのも一苦労なお花です。

大小さまざまな大きさのコアツモリソウの葉。

この向かい合って付く葉はとても特徴的なので、自生地に訪れる際はぜひ探してみて下さい。

果実期のコアツモリソウ


花も終わったコアツモリソウの果実を観察しに行ってきました。

花が咲いている時期は下を向いていますが、果実が膨らんでくると花柄が起き上がってきます。

花の先についている黒い物は花かがくの残りでしょうか?

葉は黄色系に黄葉します。

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