北海道の早春を代表する「エゾエンゴサク」を今回はご紹介したいと思います。
北海道内のあちこちで普通に見られる花ですが、改めて良く観察してみると、とても面白い花です。
エゾエンゴサクとは?
名称:エゾエンゴサク(蝦夷延胡索)
学名:Corydalis fumariifolia subsp. azurea
分類:ケシ科 キケマン属
分布:北海道、南千島、サハリン
高さが10㎝~15㎝の多年草で、早春の北海道では公園や道路沿いなど、あちこちで群生しているのをよく見かけます。
名前の由来
エゾエンゴサクは地中に球形の塊茎(かいけい)を持ち、これが漢方薬の「延胡索(えんごさく)」に似ていることが由来です。
本家の延胡索は中国で栽培されたものを生薬として使っているようです。
変わる花色
エゾエンゴサクはとても変異の多い花で、花色もバリエーション豊かです。
群生する傾向があり、1ヶ所で様々なタイプが見られるので、ぜひ探してみて下さい。
こちらは綺麗な水色で、一般的に良く見られるタイプです。
花数も少なく、可憐な印象ですね。
こちらは花弁が紫色、距(きょ)が白色のツートンカラー。
なんだかオシャレな印象ですね。
こちらの白花タイプもなかなか素敵です。
こちらはグラデーションのように、花色が徐々に変化しているタイプです。
こちらは赤色~ピンク色の個体。恵庭公園でいくつか見られました。
葉の変移が面白い
花と同じように、葉も変化に富んでいます。
こちらも同じ群落で様々なバリエーションがあるので、ぜひ探してみて下さい。
こちらが一般的な卵形タイプの葉です。
こちらは線形タイプの葉です。
先ほどの卵型タイプと同じ植物かと思うと、だいぶ変化がありますね。
こちらは真ん丸なタイプの葉。
小葉が葉の中ほどまで裂けるタイプ。
側小葉(そくしょうよう)がミトンみたいで、なんだか可愛らしい感じです。
苞葉
花の付け根に、小さい苞葉(ほうよう)と呼ばれる葉が付いています。
北海道では見分ける必要が無いですが、混生している地域では、他のエンゴサクの仲間と見分けるのに、苞葉はとても役立ちます。
エゾエンゴサクの苞葉は普通、全縁(ぜんえん)で、他の似ている種は切れ込むものが多いです。
苞葉も多少変化があって、色々と見比べてみると面白いです。
こちらは割と細めの苞葉です。
種
エゾエンゴサクの果実は蒴果(さくか)で、長さ1.5㎝~2.5㎝ほど。
この中に黒い真ん丸の種子が10個ほど入っています。
先端には柱頭の名残りが目立っていますね。
種子は熟すと裂けて飛ぶ仕組みです。
徐々に先ほどの緑色から赤茶色っぽく、種の色が変化していきます。
種子には、蟻(あり)が好む「エライオソーム」と呼ばれる白いゼリー状の物質が付着しており、周囲に飛んだ種と、蟻に運んでもらって分布を広げていきます。
上の写真は分かりやすいように、撮影用にエゾエンゴサクの葉の上に置いてみました。
群生する風景
エゾエンゴサクは、まだ葉の茂る前の広葉樹林の森の中などで、大群落を作ります。
同じスプリングエフェメラルのカタクリの群生地などでも良くセットで観察する事が出来ます。
生育には日当たりが重要なので、公園や神社の境内など人の手が入った所では、群落が大きくなる傾向があります。
カタクリのピンクと、エゾエンゴサクの青がとても写真映えしますね。
こちらは登山道沿いの天然の群生地。
このような群生地に巡り合えると、歩くのも楽しくなりますね。
スプリングエフェメラルの1種
エゾエンゴサクは春先に花を咲かせ、葉が茂り、森の中が暗くなってくる頃には枯れて、あとは地下で過ごすといった生活をしています。
そのような植物の総称を、「スプリングエフェメラル(春植物)」と言い、エゾエンゴサクはその代表種です。
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