自然観察・コラム

【北海道も記録的な雪不足】どんな問題が起きるか

令和元年から2年にかけての冬は、記録的な少雪シーズンとなりました。

この記事を書いている2020年1月7日(火)現在、札幌の積雪はたったの7cmです。(昨年度の同日は40cmありました)

今回は、雪不足がもたらす様々な影響について推測してみたいと思います。

スキー場の運営に大影響

本州のスキー場も営業できていないスキー場が多々ありますが、北海道のスキー場ですら、積雪不足で営業を見合わせているスキー場があります。

特に標高の低いスキー場では雪不足の影響が大きく、オープンが遅れています。

スキー場のビジネスは冬の短期間に集中的に稼ぐビジネスモデルの為、冬休みやお正月などの『書き入れ時』に営業出来ないだけでも、とても大きな損失となってしまいます。

今後、地球温暖化によって少雪が増えてくることを考えると、標高の低いスキー場経営はなかなか厳しい状況になってくるかもしれません。

【2020年1月22日追記】
札幌市では20日午後からまとまった降雪があり、22日午前9時現在で33㎝になりました。(札幌管区気象台、昨年度41cm、平均値57㎝)

ようやく昨年度の積雪に近づいてきたといった印象です。

今回の降雪で、札幌藻岩山スキー場や、フッズなどの標高の低いスキー場でも開放コースが増えて、恵の雪となりました。

高山植物への影響

高山植物は、その厳しい気象環境や特殊な条件に生育している事が多いですが、雪不足によってさまざまな影響が出るのではと予想しています。

高山の雪田(せつでん)は、風下側などに雪が多く溜まって、遅くまで雪渓(せっけい)として残る場所ですが、この雪渓からの豊富な融雪水でうるおう湿潤な環境を好む、『雪田植物群落』が形成されます。

大雪山を例にすると、エゾコザクラ、チングルマ、エゾノツガザクラ、アオノツガザクラ、イワイチョウ、などの高山植物です。

少雪によって、雪渓の雪が少なくなると、土壌の乾燥化が早まってしまう恐れがあります。

また大雪山では、雪解けの時期が雪渓によってバラバラで、8月末~9月にやっと雪渓が溶けて、春のお花が咲くような場所も存在します。

同じ種類でも、雪が解けた場所から咲くことで、花の開花時期がバラバラになり、特定の群落同士が交雑する事はありませんでした。

つまり、『遺伝的多様性』が雪田によって保たれてる、という事です。

今回の雪不足で、雪田が早く溶けてしまうような状況になれば、高山植物の『遺伝的多様性』に影響が出るかもしれません。

札幌ゆきまつりの開催

こちらも北海道ではニュースで取り上げられていますが、今年は本当に雪が無くて、雪像制作への影響が懸念されています。

観光客への影響ももちろんですが、携わるスタッフや関係者への影響を考えると、中止となればかなり深刻な状況になりかねません。

雪を観光資源としている北海道では、雪が無いのも困りものです。

バックカントリーゲレンデの減少

今年は雪が少なく、バックカントリーで滑りに行こうにも場所が限定されてしまいます。

特に、標高の低い場所では、まだまだ灌木や笹が出ているので、注意が必要です。

2020年1月7日現在、安心して滑れそうなのも、大雪山近郊、幌加内周辺、羊蹄山、中山峠周辺といったところでしょうか。

北海道には日帰りでアクセスできる魅力的な雪山が多いので、もう少し雪が降ってくれると嬉しいところです。

>
登山・ハイキング倶楽部

登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。

顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。

もしよろしければ、一緒に山歩きを楽しんでみませんか?

ツアースケジュールを確認する 

プライベートガイドを依頼する 

こんな記事もおすすめ
自然観察・コラム

春の山菜展2019で山菜の勉強をしてきました

2019年5月10日
Sapporo Nature Times ‐ 札幌ネイチャータイムズ
春の山菜シーズン、北海道の山ではたくさんの山菜が採れ、とても楽しいシーズンとなります。 先日、地下鉄の構内で『春の山菜展2019』のポスターを見かけました。 私は山菜と …
自然観察・コラム

大雪山の標高ランキング【2,000m以上】

2019年12月4日
Sapporo Nature Times ‐ 札幌ネイチャータイムズ
今回は、大雪山国立公園内にある標高2,000m以上の山を、標高順にランキング形式でご紹介したいと思います。 大雪山国立公園は、日本の国立公園の中で最も広く、総面積で226,7 …
自然観察・コラム

スプリングエフェメラルとは?北海道で見られる種類、場所について

2019年4月7日
Sapporo Nature Times ‐ 札幌ネイチャータイムズ
北海道では長い冬が終わると、雪解けを待ちわびたように、色とりどりの山野草が咲き始めます。 その中でも、『スプリング・エフェメラル(春植 …
自然観察・コラム

ショウジョウバカマの営業戦略

2019年6月30日
Sapporo Nature Times ‐ 札幌ネイチャータイムズ
まだ雪が多く残る時期に、地表近くから早々に花をつけている植物がショウジョウバカマです。 少し地味な花ですが、季節を感じさせてくれる大好きなお花の一つです。 今回はそんな …
自然観察・コラム

都会のオアシス「北海道大学植物園」

2019年6月9日
Sapporo Nature Times ‐ 札幌ネイチャータイムズ
JR札幌駅から徒歩10分程、北海道大学植物園は13.3ヘクタールの広さを持ち、都会の中心にありながらも貴重な自然が楽しめる場所となってます。 園内を1周すると約1時間45分程 …
自然観察・コラム

大雪山の気候・天気について登山ガイドが解説

2019年12月3日
Sapporo Nature Times ‐ 札幌ネイチャータイムズ
今回は、大雪山の気候・天気について解説していきたいと思います。 ガイドとして何度も歩いた地域ですが、気象条件は本州の山々に比べると、その違いも大きく感じます。 また北海 …