オオフガクスズムシとは
名称:オオフガクスズムシ(大富嶽鈴虫)、エゾノクモキリソウ
学名:Liparis Koreojaponica
分類:ラン科 クモキリソウ属
高さが大きいもので30㎝を超える多年草です。
学名の通り、北海道の他、朝鮮半島にも分布しています。
名前の由来
近似種の「フガクスズムシソウ(富嶽鈴虫草)」に似ていて、より高さが大きいことが名前の由来です。
ちなみに、フガクスズムシソウは着生ラン(樹の幹に生える)で、オオフガクスズムシは地面から生える地生ランなので、見分けに困る事はありません。
フガクスズムシソウの名前の由来は、富嶽は富士山のこと、スズムシソウは同じクモキリソウ属の別種の花で、昆虫の鈴虫に似た花を付ける事が由来となっています。
名前の由来を追っていくとややこしくなりますね。
オオフガクスズムシの特徴
他のクモキリソウ属の花に比べて、本種は30㎝以上になることもあります。
花色はなんとも表現しづらいですが、図鑑によると暗紫褐色。
時々緑色の花もあるようで、写真右の株の下には1つだけ緑花がついています。
上の方にはまだこれから咲く蕾が映っていますね。
正面からの花のアップです。
作りがややこしいですが、ラン科で標準的な3枚のがく片、3枚の花弁(1唇弁、2側花弁)から構成されています。
今度は横からの花のアップです。
くるりと巻いた唇弁が特徴的で、同じクモキリソウ属の「スズムシソウ」や「セイタカスズムシソウ」の唇弁は丸まらないので、見分けのポイントになります。
側がく片は唇弁を支えるような形で横に張り出し、対照的に側花弁は真下にぶら下がるような形でついています。
また花柄子房はねじれが見られますね。
写真に写っている2株は、どちらも緑花が混じって付いていました。
よく似た「クモキリソウ」はほとんどが緑花で、たまに暗褐色になるので、こちらも見分けのポイントになると思います。
葉は根元に2枚つけ、葉の縁が波打つようになっているのが特徴的です。
根元を覗いてみると、茎はけっこう太めでした。
根元に見られる玉のような偽球茎(ぎきゅうけい)は、地上茎の一部が肥大化して貯蔵器官となったもので、ラン科の花に見られるものです。
撮影時には、ほとんどの花にアリが吸蜜に来ていました。
唇弁の根元から中心部かけて蟻が集中していたので、そこから蜜が出ているのでしょう。
蜜を吸いに来た時に、ずい柱についた花粉塊(かふんかい)を訪花昆虫にくっつけて運んでもらう戦略です。
花色は地味ですが登山道沿いで咲いていたので、とても目立っていました。
トレイルランナーの方も多い場所なので、踏みつけられないか少々心配です。
クモキリソウ属の花
北海道のラン科クモキリソウ属は、以下の9種が分布しています。
- ジガバチソウ
- クモキリソウ
- シテンクモキリ
- フガクスズムシソウ
- オオフガクスズムシ
- ギボウシラン
- セイタカスズムシソウ
- アキタスズムシソウ
- スズムシソウ
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