札幌のふれあいの森で「オニノヤガラ」を観察する事が出来ました。
マダニと悪戦苦闘しながら撮影をしてきましたので、今回ご紹介したいと思います。
オニノヤガラとは
名称:オニノヤガラ(鬼の矢柄)
学名:Gastrodia elata
分類:ラン科 オニノヤガラ属
高さが1m前後になる『菌従属栄養植物』です。
分布は広く、北海道~九州の低地~山地の林内で見られます。
アジアでは中国と韓国、台湾に分布しています。
「菌従属栄養植物」
普通植物は、光合成によって自らエネルギーを生み出しますが、このタイプの植物は共生する菌類から栄養をもらって(あるいは奪って)生活しています。
つまり、光合成することを辞めてしまった植物達なのです。
光合成する必要が無いので、ほとんどの種が葉緑素を持たず、真っ白なものや、真っ黒なものなど、緑色が入らない植物になります。
身近な代表的な植物では、ギンリョウソウなどもこのタイプです。
本種の種子の発芽は、クヌギタケ属、シロホウライタケ属、イボタケ科、ケラトバシディウム科などの菌根菌に誘導され、成熟個体は木材腐朽菌の「ナラタケ属」と共生関係を築く、変わった生活様式を持っているそうです。
※出典:ラン科オニノヤガラにおける種子発芽時の菌根菌相
成長段階で「菌のパートナーを変える」、相当な変わり者の植物です。
名前の由来
その見た目を、鬼が持つ矢柄に見立て、オニノヤガラ(鬼の矢柄)の名前が付きました。
矢柄(やがら)とは、矢の棒状の部分の事ですね。
鬼は金棒のイメージですが、弓も使うのでしょうか?
オニノヤガラの特徴
花は総状(そうじょう)につき、茎の上部に花が集中しています。
写真の個体を見てわかる通り、花は下から順番に咲いていきます。
上の方の花はまだ開ききっていませんね。
アップで見てみましょう。
なんでしょうか、この美しい玉ボケにミスマッチしているグロテスクな見た目は。
花はラン科の花の作りをしていて、側がく片2枚と背がく片1枚が合着して、つぼ型になります。
側花弁2枚もくっついて見えるので、全体で見ると5裂しているようにも見えます。
花の中にある唇弁は、細かく裂けて内側に巻き込むようになっています。
ラン科の花は、個人的にいつも「人の顔」の様に見る事が多いのですが、本種のケツ顎感はとても特徴的ですね。
こちらは先ほどの花と別個体。
こちらはまだ上部の花が小さくて、スリムな見た目をしています。
同じ場所で蕾の個体も発見することが出来ました。
まるで黒いアスパラガスみたいな見た目です。
茎は綺麗な円柱状になっていました。
茎は意外にも真っすぐ伸びておらず、写真の個体は蛇行してくねくね伸びていました。
この鱗片葉(りんぺんよう)も、アスパラにそっくりですね。
本種は光合成しないので、そもそも葉が必要ありません。
蕾を構成する苞葉の隙間から、緑色の花がちらっと見え隠れしています。
同じ場所で花と蕾に出会えてラッキーでした。
おすすめの山野草図鑑
北海道の草花 Wild Flowers of Hokkaido
著:梅沢 俊
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