登山・ハイキング

【定山渓天狗岳】花と険しさが魅力の登山

札幌にある山の中で、個人的に1番好きな「定山渓天狗岳」を今回はご紹介いたします。

今回は久しぶりだったので、花の撮影もかねて登ってきました。

定山渓天狗岳とは

定山渓天狗岳は札幌市定山渓にある標高1144.5mの山で、豊富な高山植物と岩場やロープ場が人気の山です。

北海道内にたくさんある天狗岳と区別するため、「定山渓天狗岳」、または「定天(じょうてん)」と呼ばれています。

ちなみに、国土地理院の地形図上では「天狗山」の表記になっています。

アクセス・登山口

定山渓温泉街から道道1号線方面へ進み、その後右折して道道95号線を豊羽鉱山方面へ向かいます。

約10分程走ると、右手に白井川を渡る橋が見え、登山口となる天狗小屋があります。

道路沿いには特に標識も無く、登山口を見落としやすいので、グーグルマップなどで確認して向かう方がオススメです。

天狗小屋から山頂までは、片道約5km、登りで3時間~3時間半ほどのコースです。

登山道の様子(取材日:2020/6/10)

天狗小屋前に駐車して、最初は林道歩きからスタート。

アップダウンはほとんど無く歩きやすい道です。

シウリザクラの花が満開でした。

意外と近くで見ると綺麗な花なんですが、大きい花がたくさん咲く姿が個人的にはあまり好きじゃありません。

お花はつつましく上品に咲いて欲しいものです。

林道沿いには「コンロンソウ」や、崖を見下ろすと「エゾカンゾウ」なども咲いて居ました。

普通は単調な林道歩きですが、この時期は意外とお花があって退屈しません。

しばらく雨が降っていないような気がしてたのですが、泥濘がちらほら見られました。

登山道も沢沿いなので、この山はスパッツがあった方が良いかもしれません。

林縁で良く見られる「ミズキ」が、枝を横に伸ばして花を咲かせていました。

この木は日光大好きなヤツで、隙間があればこのように太陽光を求めて枝を伸ばします。

25分~30分程の林道歩きが終わると、登山道の入口に到着します。

本格的な登山の前に、一息休憩するのにピッタリな場所です。

以前はここまで車で入れたようですが、現在は入れません。

事故も起きている山なので注意看板が目立つように設置されていました。

気を引き締めて登り始めます。

序盤はトドマツ林の中、気持ちの良い登山道が続いています。

川を渡る場面が何度も出てきます。

地形図には名前が無いですが、このコースは「熊の沢コース」と呼ばれ、ずっと沢沿いに登っていくコースです。

ロープ場が出てきて、再度注意喚起の看板が登場。

この後何度もロープ場が出てくるので、普段ストックを使っている方は出したり仕舞ったりが忙しくなるかもしれません。

道が細くなっている場所もあるので、滑落しないよう気を付けて登っていきます。

沢沿いのコースで、滑りやすい場面が何度もありました。

標高を上げるにつれ、徐々に岩場が近くなってきました。

時折抜ける風が気持ち良かったです。

最後のルンゼの登りは、長いロープ場となっています。

混雑時は譲り合って、落石など落とさないよう細心の注意が必要です。

ルンゼを登り切ったら、山頂はもうすぐです!

ヤシオツツジが咲く横を通って、まもなく山頂です。

この日は天気は良かったのですが、遠望はイマイチでした。

しばらくぶりに来たけど、看板が新しくなって、なぜか天狗のイラストが入っていました。

あまり広くない山頂で混雑していたので、密を回避するため即下山することに。

見られた花(取材日:2020/6/10)

ここからは登山中に見られた花をご紹介いたします。

定天の魅力は何と言っても花の種類の多さ!

一部気分が乗らなくて撮影しなかったものもありますが、結構たくさん撮りましたので、お付き合いください。

シウリザクラ

シウリザクラ(Prunus ssiori)バラ科

林道沿いでたくさん見られました。

北海道では広く分布して良く見られる花です。

あまり好きな花じゃありませんが、近くて見るとまぁまぁ綺麗です。

ツリバナ

ツリバナ(Euonymus oxyphyllus)ニシキギ科

ツリバナの魅力は、花色に薄い紫色を帯びる事!

こちらも林道沿いで観察できました

ホオノキ

ホオノキ(Magnolia obovata)モクレン科

林道沿いにホオノキのつぼみを見つけました。ちょうど目線の高さの良い位置。

午後に下山したら、なんと咲いて居ました!

顔を近づけると、ものすごい甘い匂いでした。これは虫が寄ってくるのも納得です。

タニウツギ

タニウツギ(Weigela hortensis)タニウツギ科

ピンクで良く目立つタニウツギの花です。

林道沿いで良く見られました。

ミヤマガマズミ

ミヤマガマズミ(Viburnum wrightii)レンプクソウ科

割と地味な花ですが、こちらも林道沿いで。

葉の質感が結構好きな種類です。

ゼンテイカ

ゼンテイカ(Hemerocallis dumortieri var. esculenta)ススキノキ科

林道から川の方をのぞき込むと、急斜面に咲いて居ました。

そっぽ向いて咲いて居たので、後ろ姿だけです。

ハクサンチドリ

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)ラン科

良く見られるハクサンチドリです。

登山道沿いに普通に見られました。

ギンラン

ギンラン(Cephalanthera erecta var. erecta)ラン科

見つけたのはこの一株だけでした。

可愛らしい花です。

ユキザサ

ユキザサ(Maianthemum japonicum)クサスギカズラ科

葉を一緒に写さないと、一見何の花か分からないですね。

食べると美味しいアズキナです。

ズダヤクシュ

ズダヤクシュ(Tiarella polyphylla)ユキノシタ科

ズダヤクシュもいくつかまとまって咲いて居ると綺麗です。

タチカメバソウ

タチカメバソウ(Trigonotis guilielmii)ムラサキ科

タチカメバソウは湿った所や沢沿いに生える花で、定天の登山道沿いでは食傷気味になるほどたくさん咲いています。

北海道内の分布は西南部となっています。

カラマツソウ

カラマツソウ(Thalictrum aquilegiifolium var. intermedium)キンポウゲ科

良く見られるカラマツソウも、ここでは数株だけでした。

咲く前の方が好きな花です。

クルマバソウ

クルマバソウ(Galium odoratum)アカネ科

どこでも良く見られるクルマバソウです。

オドリコソウ

オドリコソウ(Lamium album var. barbatum)シソ科

樹林帯でいくつか見られました。

シャク

シャク(Anthriscus sylvestris)セリ科

背の高いセリ科のシャク。

登山道沿いでいくつか見られました。

オオバミゾホオズキ

オオバミゾホオズキ(Mimulus sessilifolius)ハエドクソウ科

湿ったところに生える花の代表種。

定天ではたくさん見られました。

花の中を覗き込むと、斑点と毛がとても気になります。

オオバタケシマラン

オオバタケシマラン(Streptopus amplexifolius)ユリ科

数株見つける事が出来ました。

花が小さく、下向きに咲くので見つけづらい種類です。

この花は反り返った萼片がポイント!

ナンブソウ

ナンブソウ(Achlys japonica)メギ科

岩手県に住んでたことのある私にとっては親近感の沸く花です。

花より葉が可愛いです。

コマガタケスグリ

コマガタケスグリ(Ribes japonicum)スグリ科

スグリの中でも細長い穂状に花を付けるのはコイツだけ!

道民は「コマガタケ」と聞くと渡島の駒ヶ岳を思い浮かべますが、本種の名前の由来は「木曽駒ヶ岳」からです。

風に吹かれて、ダイナミックにゆれていた「コマガタケスグリ」。

サイハイラン

サイハイラン(Cremastra appendiculata var. variabilis)ラン科

サイハイランはたくさん見られましたが、全てつぼみでした。

1週間後なら咲いていそうな感じです。

シラネアオイ

シラネアオイ(Glaucidium palmatum Siebold et Zucc)キンポウゲ科

定天の登山道では、シラネアオイの群落がいくつか見られます。

上部のルンゼ下あたりに群生し、辛い登りの励みになりました。

落ちた花弁は青っぽくなります。これもまた素敵です。

エゾスグリ

エゾスグリ(Ribes latifolium)スグリ科

赤い鐘型の小さな花を付けます。

花の径は2㎜程で、写真を撮る時はピンボケしやすいのが困りものです。

エゾグンナイフウロ

エゾグンナイフウロ(Geranium onoei var. onoei f. yezoense)フウロソウ科

チシマフウロより葉が鋭くとがり、腺毛が密生しているのが特徴です。

上部の岩場付近で見られました。

ノビネチドリ

ノビネチドリ(Neolindleya camtschatica)ラン科

波打つ葉が可愛いピンクのランです。

序盤の林道、上部の岩場付近で見る事が出来ました。

ヒメナツトウダイ

ヒメナツトウダイ( Euphorbia sieboldiana var. montana)トウダイグサ科

幾何学的な美しさのある花です。

稜線付近や岩場周辺でいくつか見られました。

ミヤマオダマキ

ミヤマオダマキ(Aquilegia flabellata var. pumila)キンポウゲ科

どこにでも生える・見られる花の代表です。

あまりありがたみがありませんね。

エゾシモツケ

エゾシモツケ(Spiraea media var. sericea Regel)バラ科

上部の岩場で見られました。

ヤマハナソウ

ヤマハナソウ(Saxifraga sachalinensis F.Schmidt)ユキノシタ科

今回の定天で見たかった花の一つです。

ユキノシタ科の花は小さいですが、とても綺麗な形をしています。

なんだか最近はワラビ取りをしていたせいか、ワラビに似ている気がしてきました。

まだ蕾の個体が多かったので、来週には見頃になるでしょうか。

葉の裏が赤いのと、花茎の腺毛が可愛い感じです。

シコタンソウ

シコタンソウ(Saxifraga bronchialis subsp. funstonii var. rebunshirensis)ユキノシタ科

まだ花期には早かったですが、一輪だけ咲いていました。

岩場に咲く花で、結構好きな花の一つです。

キジムシロ

キジムシロ(Potentilla fragarioides var. major)バラ科

わりとどこにでも咲いているキジムシロです。

サクラソウモドキ

サクラソウモドキ(Cortusa matthioli ssp. pekinensis var. sachalinensis)サクラソウ科

今回の定天で見たかった花の一つ。とても大好きな花です。

いつものダケカンバの傍で、今年も咲いていてくれました。

下垂したピンクの鐘形の花は、とても可愛らしいです。花柱がつき出ているのが特徴的です。

「サクラソウモドキ」という失礼な名前を付けられていますが、本家のサクラソウにも劣らない魅力があると思います。

分布は道内の崖や岩場に局所的で、これからも大事に生き残ってほしい花の一つです。

ミヤマエンレイソウ

ミヤマエンレイソウ(Trillium tschonoskii)ユリ科

平地ではほとんど花期は終わっていますが、標高の高い場所ではまだまだ見られました。

ミドリニリンソウ

ミドリニリンソウ(Anemone flaccida F.Schmidt f. viridis Tatew)キンポウゲ科

ニリンソウも多かったですが、ミドリニリンソウもいくつか見る事が出来ました。

サンカヨウ

サンカヨウ(Diphylleia grayi)メギ科

サンカヨウは上部のルンゼ下付近に数株だけ見られました。

センボンヤリ

センボンヤリ(Leibnitzia anandria)キク科

ルンゼを登り切って、稜線上に咲いて居ました。

別名は「ムラサキタンポポ」

春と秋に花を付ける変わったやつです。

イワベンケイ

イワベンケイ(Rhodiola rosea)ベンケイソウ科

岩場の多い定天では、岩場で普通に見られます。

ミヤマハンショウヅル

ミヤマハンショウヅル(Clematis alpina ssp. ochotensis)キンポウゲ科

意外とこの3出複葉の葉も可愛いと思っています。

稜線上でいくつか見られました。

キクバクワガタ

キクバクワガタ(Pseudolysimachion schmidtianum var. schmidtianum)オオバコ科

岩場で何株か観察することが出来ました。

青色がとても綺麗な花です。

クロツリバナ

クロツリバナ(Euonymus tricarpus)ニシキギ科

ツリバナも良いですが、こちらのクロツリバナも綺麗な花です。

山頂付近で見られました。

まとめ

  • お花好きにはオススメ
  • ロープ場が多く、変化に富んだ登山道が楽しい
  • 沢沿いなので、スパッツ&虫よけスプレーは忘れずに

花と険しさが魅力の「定山渓天狗岳」をご紹介いたしました。

それなりに登りごたえもある山なので、お花見目的の方も体力をつけて挑みましょう!

最後まで御覧いただき、ありがとうございました。

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