フクジュソウとは
名称:フクジュソウ(福寿草)
学名:Adonis ramosa
分類:キンポウゲ科 フクジュソウ属
高さが15~30cmの多年草で、分布は北海道~九州と広く分布しています。
北海道ではその他、近似種のキタミフクジュソウ(Adonis amurensis)が道東・道北に分布しています。
北海道外では、ミチノクフクジュソウ(東北~九州)や、シコクフクジュソウ(四国・九州の一部)などの種類もあります。
名前の由来
旧暦の元旦(1月20日~2月20日頃)の頃に咲くことが由来となっています。
北海道での花期は3月~5月なので、あまり正月感は無いですが、雪解け1番に咲くこの花はなんだかおめでたい感じがします。
全体像
雪解け直後、覆われていた鱗片葉(りんぺんよう)から葉と花を出します。
開花後も、鱗片葉は茎の根元に残っているのが目立ちます。
花弁は20~30個、葉は羽状複葉で細かく裂けるのが特徴です。
雪解け間もないころから咲き、まだ葉の茂る前の広葉樹林の林床を明るく彩ってくれます。
フクジュソウの花
花弁の個数は20~30個、がく片よりやや長いのが特徴です。
写真の茶色っぽいのががく片なので、花弁がやや長いのが分かりやすいですね。
日当たりの良い時は良く開き、日当たりの悪い時は写真のように花を閉じます。
こちらは先ほどの写真より花を開いていますね。
花の中心部には、多数の雄しべと雌しべがあるのが分かります。
また真ん中に丸く見えているのが子房で、これが受粉して集合果になります。
パラボラアンテナ型の花の秘密
まだまだ寒い時期に咲くフクジュソウには、そのハンデを補う為に、太陽光を味方につける作戦を取っています。
- このパラボラアンテナのような形の花びらを持つことで、太陽光の熱を中心部に効率よく集める事ができ、外気温より花びら内の方が暖かい
- 花、葉、地上茎が太陽光の動きに合わせて動く、『向日性』を持っている
花粉を運んでくれるハエやアブなどの仲間は、春の外気温の低い時期は、体温が上げられず、活動が鈍くなります。
そこでフクジュソウは花びらにとまった虫達に熱と花粉を報酬として与え、結果、虫達の体温を上げる事で受粉を手伝ってもらう作戦を取っています。
蜜線が無いフクジュソウが、熱を味方につけて訪花昆虫をおびき寄せているのは、面白い仕組みですね。
集合果
花期が終わると花弁が落ち、茎の先に球形の集合果(しゅうごうか)が残ります。
※集合果:多数の花に由来した果実が集って,外見上一つの果実となっているもの
アップにしてみました。
集合果は有毛で細かい毛が生えており、曲がった柱頭が残ります。
こちらの写真はまだ花弁が少し残った状態の集合果。
群生していたフクジュソウの集合果です。
これだけ見るととても結実率が高く見えますね。
南斜面の日当たりの良い場所だったので、上手く訪花昆虫達が頑張ったのでしょう。
托葉
フクジュソウの葉は互生して、小さな托葉があるのがポイントです。
北海道に分布する近似種のキタミフクジュソウは、対生して托葉が無いのが違いです。
とはいえ、両種は生育地が違うのであまり見分けに困る事は無さそうです。
フクジュソウの群生する風景
北海道の洞爺湖エリアのいくつかで、フクジュソウの群生が見られました。
春の日差しをたっぷり浴びて咲いている姿は、見ていてとても気持ち良いものです。
日当たりの悪い時は、皆一様に花がすぼまっています。
こんな姿も面白いですね。
フクジュソウは日が差し込む方へ花を向けるので、群生している箇所で見ると同じ方向を向いている個体が多いです。
フクジュソウの毒
フクジュソウは全草に毒があり、特に根っこの部分は毒が強いと言われています。
若芽の時期に「ふきのとう」と間違えて誤食する事があるそうですが、調理の段階で気づきそうな感じがします。
毒は「強心配糖体」といわれる成分で、激しい腹痛や嘔吐などの症状が出ます。
スプリングエフェメラルの1種
フクジュソウはスプリングエフェメラル(春植物)の代表的な種で、春先に咲いて夏には地上部を枯らし、あとは地中で過ごすといった生活様式を持っています。
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