まだ雪が多く残る時期に、地表近くから早々に花をつけている植物がショウジョウバカマです。
少し地味な花ですが、季節を感じさせてくれる大好きなお花の一つです。
今回はそんなショウジョウバカマについてご紹介いたします。
ショウジョウバカマとは
ショウジョウバカマ(猩々袴、学名: Heloniopsis orientalis )
分布は北海道から九州までで、低地の湿原~亜高山の湿った草地などに生えます。
雪の多い大雪山周辺の亜高山帯では、雪渓が溶けた場所ではまっさきにこのショウジョウバカマが咲き始めます。
花のアップの写真です。
遠目に見ると地味な花ですが、寄ってみるとなかなか可愛らしい姿をしています。
雄しべは6個、花被片は6枚、子房は3室に分かれています。
花序(かじょ)は半球形で、小さな花が多数ついています。
裏側のアップ写真です。
変わる花色
山地で見られる株は通常、紫色の花が多いです。
自生地の雪解け間もない場所では、この紫色の花が良く目立ち。あちこちで見られます。
湿原に咲く株は赤色~薄紅紫で、赤みがかるのが特徴です。
こちらは道北の松山湿原で撮影したもので、真っ赤な花色でした。
ショウジョウバカマの名前の由来は、花が赤いのを猩々(しょうじょう:中国の伝説上の動物)、根生葉の重なりが袴(はかま)に見える事から名付けられたとされています。
猩々とはあまり馴染みのない動物ですが、日本の伝統芸能『能(のう)』の演目で、猩々が真っ赤な能装束で着飾る様子から転じて、赤色のものを指すことになったようです。
ポインセチアの和名の『ショウジョウボク』や、『ショウジョウトンボ』など、日本では赤色の色彩を持つ生き物に良く採用されています。
なぜそんなに高く伸びるのか
開花時には数センチの花茎でその後10~20cmほどになりますが、ショウジョウバカマは花が終わった後もグングンと花茎を伸ばしていきます。
時には50㎝を超えることもあり、その小さな花からは何ともアンバランスな姿になります。
ショウジョウバカマの種は、蒴果(さくか)で乾燥して裂けて種を飛ばす仕組みです。
種子は軽くて風に飛ばされやすく、効率よく風散布を利用する為に、種の位置を高くする事が狙いです。
また振り子を逆にしたような姿は、風が吹くと地面を支点にして、花茎がしなるように良く揺れます。
リスクマネジメント
ショウジョウバカマは確実に種子を作るため、以下のような方法を採っています。
・『雌性先熟(しせいせんじゅく)』
開花時には雌しべのみ成熟して花粉を受け取る事が出来き、その後に雄しべが成熟して花粉を放出する。この仕組みによって、最初は自家受粉を防ぎつつ、受粉が出来なかった時のために自家受粉の選択肢も残しているといった、メリットがあります。
・花被片の基部にから蜜を出すが、その杯型の花の形は、大型の蜂から小型の昆虫まで、吸蜜しやすい形状になっている。
・『不定芽』による繁殖
ショウジョウバカマの根生葉は3年が寿命で、3年葉の先から不定芽による栄養繁殖で子孫を増やしていきます。
※上の写真には不定芽は映っていません。不定芽の撮影が出来たら掲載します。
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