期間限定で通行できる三笠新道を通り、白雲岳避難小屋泊で白雲岳へ登る1泊2日のツアーに行ってきました。
お花も多く、天気にも恵まれましたので、ご紹介したいと思います。
三笠新道とは
三笠新道(みかさしんどう)とは、大雪高原温泉にある沼巡りコースから、高根ヶ原分岐までの登山道です。
高根ヶ原の斜面はヒグマの餌場となっており、ヒグマが採餌を始める6月下旬頃(※時期は変動あり)には通行止めとなってしまいます。
登山口までの町道高原温泉道路が開通するのが、例年6月10日前後なので、実質3週間程度しか通行が出来ないことになります。
※2021年度は7月5日(月)から通行止めとなりました。
高原沼と空沼(からぬま)の中間地点付近に三笠新道があります。
実際には三笠新道が通行可能な時期は、ほとんどの登山道が雪渓の下に隠れているので、ルートがやや分かりにくいです。
白雲岳とは
白雲岳(はくうんだけ)は、標高2230mの山で、同じ大雪山の旭岳(2291m)、北鎮岳(2244m)に次いで、北海道で3番目に高い山になっています。
縦走路から少し外れた位置にあるので、意外と登ったことの無い方も多いのではないでしょうか。
白雲岳の山頂からは、後旭岳方面にひろがる通称「ゼブラ雪渓」が近年人気となっています。
今回のツアー2021年6月28日に撮影したものです。
こちらは2011年7月19日に同じ白雲岳山頂から撮影したものですが、雪が少ないとちょっと地味な印象です。
登山行程&地図
登山口は大雪高原温泉で、広い駐車場と公衆トイレがあります。
ここからは、緑岳へ登る登山口と、沼巡りコースへ入る「ヒグマ情報センター」さんがあります。
【1日目】
沼巡りコースの起点となる、「ヒグマ情報センター」さんから入山します。
ここでは、10分程度ヒグマに関する情報のレクチャーがあります。
沼巡りコースは左回りの一方通行になっていますので、ご注意ください。
沼巡りコースから三笠新道を通り、高根ヶ原分岐を経由して白雲岳避難小屋へ向かいます。
「コースタイム参考」
ヒグマ情報センター10:35 ⇒ ヤンベタップ川渡渉11:05 ⇒ 緑沼11:55~12:05 ⇒ 高原沼ピーク12:50~13:00 ⇒ 三笠新道分岐14:35~40 ⇒ 白雲岳避難小屋16:10
山中所要時間:5時間半程度
登り標高差761m
距離7.8㎞
【2日目】
白雲岳避難小屋から白雲岳へ向かい、小泉岳、緑岳と経由して高原温泉へ下山します。
「コースタイム参考」
白雲岳避難小屋5:00 ⇒ 白雲分岐5:35~45 ⇒ 白雲岳山頂6:25~35 ⇒ 白雲分岐7:00~10 ⇒ 小泉岳7:30~35 ⇒ 板垣新道分岐8:30~40 ⇒ 緑岳9:05~10 ⇒ co1690付近10:10~15 ⇒ 見晴台11:10〜15 ⇒ 大雪高原温泉11:45
山中所要時間:6時間半程度
標高差↑366m ↓1122m(※GPS計測)
距離9.6㎞
白雲岳避難小屋
白雲岳避難小屋のホームページが新しく開設されていました。
まだ検索上位に出てこない(※この記事執筆時点)ので、良く利用する方はブックマーク登録をした方が良いかもしれません。
リンク:白雲岳避難小屋
また令和3年度はコロナ対策で、小屋やテントを利用の方は事前に人数を通知するフォームがホームページ内にあります。
混雑緩和の為、宿泊予定の方は必ず事前連絡をしておきましょう。
登山道の様子(21/06/27,28)
ヒグマ情報センターで入山の手続きをし、沼巡りコースを進みます。
この時期はまだまだ雪が多いので、スパッツやストックはあった方が無難です。
部分的に木道が出ている箇所もありました。
緑沼も御覧の通り雪が多いです。
この沼巡りコースではこの緑沼と大学沼、高原沼でのみ食事が可能です。
大学沼ピーク付近から高根ヶ原の斜面です。
この時期は雪渓を利用して最後のスキーやスノーボードを楽しむ方も多いです。
この日も天気が良く、たくさんのスキーヤー&ボーダーを見かけました。
高根ヶ原の急斜面から、落石が落ちてくる事があります。
通過の際は、注意して進むようにしましょう。
大学沼、高原沼、空沼付近は高根ヶ原から飛ばされた雪が溜まる箇所なので、この時期でも残雪が多く残っています。
振り返ると高根ヶ原の斜面の景色が良かったです。
三笠新道の尾根についたら、雪渓の急斜面が待っています。
今回は昼過ぎの通過でしたので、軽アイゼンでOKでしたが、早朝や雪が固い時は10本爪アイゼンが欲しい所です。
三笠新道上部から、沼巡りコースの空沼(からぬま)が見えています。
高根ヶ原の稜線上は風の通り道なので、積雪はありません。
ここから、たくさんの高山植物が咲いていました。
大雪山を代表するエゾコザクラ。
大雪山の固有種「キバナシオガマ」です。
まだまだ咲き始めで、数株程度のみ開花していました。
ホソバウルップソウは大雪山の固有種。
高根ヶ原では代表的な高山植物になります。
コマクサはまだまだ咲き始め、つぼみの個体も多かったです。
満開のミネズオウがいくつかの場所で見られました。
別名タカネオミナエシ。
こちらは開花している株は無く、全てつぼみでした。
正面左側のピークが、明日に登る白雲岳山頂です。
イワウメ(白)、エゾオヤマノエンドウ(紫)、ホソバウルップソウ(青)、この時期は色とりどりの花が咲いていて華やかな稜線になります。
白雲岳避難小屋は昨年(2020年)に建て替えられて、とても綺麗な小屋でした。
混雑緩和で私はテント泊、お客様達は新しい小屋に泊まりました。
2日目、白雲岳山頂を目指します。
朝日を浴びてとても目立っていた白雲岳避難小屋と、その向こうに雄大なトムラウシ山が見えています。
白雲分岐までは雪渓がありますが、斜度があまりないのでアイゼン無しでOKです。
白雲分岐に到着です。
今まで見られなかった山々の展望が広がります。
写真右手から、烏帽子岳(えぼしだけ)、黒岳(くろだけ)、桂月岳(けいげつだけ)、凌雲岳(りょううんだけ)になります。
白雲分岐から、白雲岳山頂を目指します。
ここは風が強い風衝地(ふうしょうち)で、ハイマツも生えておらず、背丈の低いイワウメが主役になっています。
ジムカデも見られました。
小さな花ですが、良く見ると可愛らしいお花です。
白雲岳の山頂付近の斜面には、雪渓が多く残っている箇所があります。
通常の夏道とルートが変わりますので、マーキングを見落とさないように、注意して登りましょう。
過去には滑落事故もあった雪渓なので、この時期は夏道沿いに登らない方が良いです。
白雲岳山頂稜線の岩稜帯を進んで行きます。
背後には烏帽子岳とその向こうにニセイカウシュッペ山が見えています。
白雲岳山頂からは、後旭岳方面の「ゼブラ雪渓」が綺麗に見えていました。
このゼブラ雪渓は雪が多く残る時期の方が綺麗なので、6月下旬~7月1週目頃までがオススメです。
白雲分岐まで戻り、小泉岳(こいずみだけ)を目指します。
毛深いエゾノタカネヤナギに朝露が付いてとても綺麗でした。
小泉岳は大雪山でも屈指の平らな山頂。
小泉岳周辺は天気が良いと気持ちの良い登山道ですが、強風や濃霧で視界が悪い時は大変な場所です。
チシマアマナが見られました。
この花も花期が早いので、ちょうど今が満開といった所でしょうか。
この時期の稜線上はイワウメが本当に見事です。
まだつぼみの花もたくさんあったので、まだまだ楽しめるでしょう。
少し花期には早いですが、エゾタカネスミレが数株開花していました。
エゾノタカネヤナギ(雄株)
チョウノスケソウも開花始めで、まだまだつぼみの個体も多いです。
ちょっと見分けが自信無いのですが、背丈が低いので「エゾミヤマツメクサ」でしょうか。
稜線上からは昨日泊まった白雲岳避難小屋が見えています。
エゾハハコヨモギはまだ開花している株がありませんでした。
緑岳山頂への稜線歩き、気持ちの良い登山道です。
緑岳山頂からは、高原温泉へ降りていきます。
天気予報は午後から雨っぽく、周囲にも発達した積乱雲が出てきました。
第二お花畑と第一お花畑はまだ厚い雪渓の下です。
ここは雪が解けて8月頃に見頃になる遅めのお花畑です。
樹林帯ではエゾノイワハタザオが咲いていました。
高原温泉登山口の近く、ダイセツヒナオトギリも開花していました。
大雪山固有種で、地熱の高い箇所に生えています。
この花が見えると、まもなくゴールです。
まとめ
三笠新道の歩く際の注意点を下記にまとめました。
- 三笠新道は残雪が多いので、軽アイゼン着用がオススメ
- 白雲岳避難小屋orテント利用の場合は事前連絡をしましょう
- 三笠新道は通行止めになる可能性があるので、事前にヒグマ情報センターのホームページをチェック!
- 残雪が多く、視界が悪い時はある程度のルートファインディングが必要。
- 高根ヶ原の稜線は6月下旬頃がお花の見頃!
最後まで御覧いただき、ありがとうございました。
「参考ページ」
別リンク:白雲岳避難小屋
別リンク:ヒグマ情報センター
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