2018年に支笏湖畔のオコタン崎という場所で発見された『ミズナラ』の巨木が話題となっており、ハイカーを中心に人気となっていました。
今回は森林インストラクターとして、このコースを歩いて自然解説をしていきたいと思います。
もくじ
アクセス
恵庭岳の山麓、支笏湖の丸駒温泉の近くに林道の入口があり、ゲート前に2~3台ほど駐車可能です。
丸駒温泉の駐車場を利用する場合は、フロントで一声かけて、帰りに日帰り入浴でも利用するなどの配慮が必要だと思います。
ただし、丸駒温泉の日帰り入浴は、午前10時~午後3時までなので、帰りが遅くなる場合は利用出来ませんので、注意しましょう。
GPSログ
片道約3.3㎞、のんびり撮影しながら歩いて2時間ちょっとでオコタン崎まで到着しました。
ほとんど平坦なのですが、微妙なアップダウンがあるルートです。
ルートの様子(取材日:2020/01/26)
序盤からしばらくは林道歩き
ルートのほとんどは林道歩きです。
単調な景色が続き、展望もあまり良くないです。
開けてる河原では、恵庭岳方面がちらっと見えました。
スノーシューで歩くつもりだったのですが、支笏湖周辺も雪が少なく、すべてツボ足でOKでした。
岩が雪で隠れている場所もあるので、足元に注意して進みます。
林道上には倒木がいくつかありました。
アニマルトラッキング
雪があまり降っていないせいか、動物の足跡がたくさん見られました。
上の写真は野ネズミの足跡で、しっぽを引きずる跡が特徴的です。
こちらはシカの足跡。蹄が特徴的で分かりやすいですね。
人が歩いた足跡とシカの足跡が重なるようにたくさんついていました。
足跡を読むと見えてくる風景
勘の鋭い方は上の写真を見てお気づきかと思いますが、林道から届く範囲のササが、シカに食べられていました。
あまり食べない茎の茶色い部分が良く目立っています。
葉が綺麗に食いちぎられていました。
冬季のシカの主食はササです。
今年は雪が少なく、ササが雪で覆われる心配もないので、いくらでも食べる事が出来るでしょう。
シカの糞も落ちていました。
ウサギの糞と似ていますが、ウサギの糞は球状でより丸く、シカの糞はどちらかというと俵型なのが特徴です。
シカの角研ぎ跡も見られました。
よくクマの爪跡と勘違いする方もいますが、シカの角研ぎ跡は、樹に擦り付けるように乱雑に跡が残ります。
笹薮が濃くなり始める
ササ藪が濃くなり始めますが、距離が短いのでそこまで気になりませんでした。
目印のテープもいくつかついているので、見落とさないように進みましょう。
フッキソウが出てきて雪の少なさを実感
雪が少なく、日当たりのいい場所は地面が露出しており、フッキソウが顔を出していました。
フッキソウ(富貴草)は常緑の小低木で、シカの不趣向性植物、つまりシカがあまり美味しくないから食べない植物なんです。
支笏湖地域はエゾシカが多い地域なので、シカの食べない植物が多く残ります。
標高380m地点辺りで林道・作業道跡を外れて南へ進路を変えます。
ここからは道が無いのですが、ササの無い場所なのでとても歩きやすいです。
1000年ミズナラ登場
この辺り一帯に巨木が多いのですが、その中でもひときわ目立つ巨木が噂の『1000年ミズナラ』です。
幹周が689.5㎝、樹高は25mを超えています。
津別町の『双葉のミズナラ』が幹周約6.47mで推定樹齢1200年なので、それ以上の樹齢ではないかとされています。
株立ちしたような樹形は、厳しい自然条件を、長い年月をかけて耐え抜いてきた風格がありました。
ミズナラなどのコナラ属は、萌芽能力が高く、修復・再生能力が高い樹種です。
ミズナラがあまり大きくならないのは、幹だけでは無く、根にも栄養を回して萌芽能力を高めていると言われています。
ミズナラは攪乱地を好む陽樹(日当たりのいい場所を好む樹種)で、太平洋側に多く、山火事や伐採、茅場の火入れなどを利用して分布を拡大してきました。
つまり、攪乱地で真っ先に定着することが得意な樹種となります。
支笏湖の北側に位置するこの場所は、樽前山の1739年噴火の影響はほとんどないので、巨木が多く見られる森です。
近くの恵庭岳は目立った噴火は約2000年前で、その後も数回の水蒸気噴火が発生しているようです。(出典:気象庁 恵庭岳(えにわだけ) Eniwadake)
恵庭岳の昔の噴火によって、森が攪乱(倒木、山火事などで森に隙間が出来ること)され、その後にこの1000年ミズナラのドングリがまっさきに定着したのかな~・・・、なんて色々と想像してしまいました。
攪乱は噴火以外にも台風や、老木の枯死など様々な要因で発生するんですけどね。
幹の根元には大きな洞(うろ)が空いていました。
今度は葉の茂る時期に再訪したいと思いました。
ミズナラは紅葉があまり綺麗じゃないので、新緑の時期が良いかな。
ハリボテのようなシナノキ
途中、皮だけで立っているようなシナノキに出会いました。
まるでハリボテのような姿で、ほとんど中身がありません。
横から見ても御覧の通り、樹皮だけで立っているような感じでした。
しかし、この樹はちゃんと生きていました。萌芽から伸びた枝に冬芽がちゃんと着いていました。
このシナノキが何故生きているかというと、外側の形成層が残っているから。
樹木は外側の形成層(けいせいそう)に、道管(水)と師官(栄養素)があって、そこさえ残っていれば生きていくことが出来るんです。
逆に樹の周囲をぐるっと1周、シカに食べられてしまえば水を運べず、栄養素を運べずに枯死してしまします。
樹木の中心部は心材といって、生命活動が終わってしまった部分ですが、主に幹を支える役目があります。
今は隣のトドマツにもたれかかっていますが、台風などで強風にさらされた時に倒れないか心配です。
オコタン崎へ
ミズナラ巨木からオコタン崎へは、地形図では分かりずらい急な斜面もあるので、少し迂回して向かいました。
細い尾根の突端が『オコタン崎』です。あまり展望は良くない場所です。
正面には風不死岳(フップシダケ)が見えました。
葉の無い時期だからいいですが、グリーンシーズンに来ると、なおのこと展望が悪くなりそうです。
反対側には木の隙間から恵庭岳が見えました。
まとめ
- 巨木好きにはオススメ
- 展望はあまり楽しめない
- アップダウンが少ないので、体力の無い方でもOK
最後まで御覧いただきまして、ありがとうございました。
登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。
顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。
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