登山・ハイキング

春の『殿様街道(とのさまかいどう)』道南の古道を歩いてきました。

雪が解けて暖かくなってくるころ、「北海道民はついつい暖かさを求めて道南の方へ旅行したくなる」、と思ってるのは私だけでしょうか?

ゴールデンウィークの頃は、道南の松前城や五稜郭の桜を見に行く方が多いですが、今回は趣向を変えて、『殿様街道』を歩いてきました。

素敵な古道トレッキングと、美しい山野草を楽しむことが出来たので、今回ご紹介したいと思います。

殿様街道(とのさまかいどう)とは

江戸時代に切り開かれた山道のひとつで、道南の福島町の千軒地区から三岳地区に現存しています。

かつて27里(約105km)あった松前から箱館(函館)に至る街道の一部とのことです。

歴史を感じる古道が現在まで整備され、歩けるというのは本当に感謝ですね。

北海道内には以下の古道もトレッキングルートとして知られています。

・様似山道(さまにさんどう)
・猿留山道(さるるさんどう)
・濃昼山道(ごきびるさんどう)
・増毛山道(ましけさんどう)
・礼文華山道(れぶんげさんどう)

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アクセス・登山道までのアプローチについて(調査日2019/4/28)

国道228号線からの入口は、道路案内の青看板で『サテライト7.3km、奥二股6km』が目印です。

知内町側から来ると、『大千軒岳登山口』の看板も良い目印になります。

殿様街道入口の看板付近に駐車スペースが数台ありますので、通行の邪魔にならないように停めましょう。

看板上には周遊ルートが記載されていましたので、今回は時計回りで歩くことにしました。

まっすぐ進みたくなる道ですが、写真の中央左手にある木製の橋が正式ルートです。

どうやら国鉄松前線の線路跡みたいで、案内看板等が何もないので注意していないと真っすぐ進んでしまいそうでした。

すぐにクリ林に到着しますが、「N建設 熊出没のため通行止め」の看板があり通行できません

函館在住の方からの情報では、親熊が子熊にクリの食べ方を教える教育の場になっているとの話も耳にしました。

またネット上には、『私有地のため通行止め』の看板があったとの情報もあったので、一般ハイカーはあまり歓迎されていない感じなのかもしれません。

クリ林を迂回出来る刈払道がありました。

殿様街道入口看板から国道側の箇所で、上の写真のオレンジ線で記載したラインです。

立ち入り禁止看板を超えるより、こちらからアプローチした方が無難だと思います。

古道の様子(調査日2019/4/28)

あちこちでスギの木を見る事が出来ました。

杉は札幌圏では神社ぐらいでしか見られないので、山の中で見られると、はるばる道南まで足を延ばした嬉しさがありますね。

ブナの木も多く生えていました。

ブナは北限が黒松内町なので、こちらも道南のイメージが強い樹木です。

スタート地点から知内嶺(251m)までは標高差約130m程の登りになります。

芽吹く前の落葉樹林帯は春の日差しが林床まで届き、また展望も良く、快適な尾根歩きを楽しめました。

しばらくすると『砲台跡』の看板が出てきました。

砲台跡らしい痕跡は他に何もないので、看板が無ければ素通りしていまいそうです。

知内嶺には『旧・御料林境界標識』の看板が立っていました。

ここから茶屋峠側に下る道もありますので、時間の無い方は小回りして帰ってくる事も出来そうです。

知内嶺から少し進んだところに、まだ真っ白な『大千軒岳(1071m)』が見える箇所がありました。

唯一綺麗に見える場所でしたが、葉が茂った後は展望イマイチかもしれません。

ブナの大木が多く、新緑と春の日差しはとても気持ちがいいものでした。

ルートの途中では、国鉄松前線の線路があった鉄製の橋を渡る箇所がありました。

老朽化しているのと、高度感があるので、高所恐怖症の方は少し怖いかもしれません。

鉄道のトンネル跡はコンクリートで塞がれていました。

橋を渡った後は、沢沿いの道がしばらく続きます。

足元の汚れが気になる方はスパッツがあった方が良いかもしれません。

途中、キツツキ類の食痕が見られました。

クマゲラの場合は穴が縦長になるので、おそらくアカゲラあたりかと思います。

茶屋跡の看板が出てきました。

安政4年は1857年の江戸時代です。

樹齢約200年のブナの巨木です。

このあたりでは一番の巨木との事で、なかなか見事で存在感のある木でした。

見られた植物(調査日2019/4/28)

スミレサイシン

スミレサイシン(Viola vaginata)スミレ科

北海道では主だった分布が西南部なので、観察出来て良かったです。

この殿様街道では至る所に咲いて居ました。

ナガハシスミレ

ナガハシスミレ(Viola rostrata)スミレ科

別名がテングスミレで、唇弁の距が2cm前後と長く、後ろ上方に突き上げています。

同定が難しいスミレ類ですが、この特異な姿は誰もが一度見れば忘れないでしょう。

北海道内の分布は西南部と浜頓別になります。

3つ並んだ可愛らしい天狗三兄弟でした。

シラネアオイ

シラネアオイ(Glaucidium palmatum Siebold et Zucc)シラネアオイ科

近くの大千軒岳はシラネアオイの群落で有名ですが、こちらはちらほらと咲いて居る程度でした。

日本固有種でとても人気のある花ですね。

ヒトリシズカ

ヒトリシズカ(Chloranthus japonicus)センリョウ科

数は多くないですが、観察することが出来ました。

控えめで可愛らしく、例えるなら大和撫子のような花です。

キブシ

キブシ(Stachyurus praecox)キブシ科

先駆種的な性質を持つ木で、線路跡や河原付近で観察することが出来ました。

葉を伸ばす前に一面に花を咲かせる様子がとても目立つ木です。

北海道内での分布は西南部に限られるので、見られて嬉しかったです。

オオバキスミレ

オオバキスミレ(Viola brevistipulata ssp. brevistipulata)スミレ科

変異の多い花で、いろいろな変種や亜種がある花です。

ルート上では広く見られ、いくつか群生している箇所もありました。

キバナイカリソウ

キバナイカリソウ(Epimedium koreanum)メギ科

花も葉も個性的な姿で、覚えやすい花です。

北海道内での分布は留萌地方以南になります。

カタクリ&エゾエンゴサク

一部ですが、見事に群生している箇所がありました。

このような天然の群生地が見られると、とても嬉しくなりますね。

キクザキイチゲ

キクザキイチゲ(Anemone pseudoaltaica H.Hara)キンポウゲ科

花弁の数が多い個体がいました。

春の花の代表的な種類で、ルートのあちこちで咲いていました。

サンカヨウ

サンカヨウ(Diphylleia grayi )メギ科

葉はいくつか見かけましたが、花を咲かせている個体は1つだけでした。

時期的にはこれからといったところでしょうか。

イチヨウラン

2021/4/30

2019年に訪れた際には見かけなかったのですが、2021年4月30日にツアーで訪れた際に見つけました。

カタクリなどは終わりかけだったので、より季節が進んでいたのでしょう。

まとめ

・クリ林は立ち入り禁止看板があるので、迂回路を通ること
・札幌圏とは違う植生を観察できるのが楽しい。

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