植物図鑑

コケイラン「北海道の花」

コケイランとは

名称:コケイラン(小蕙蘭)
学名:Oreorchis patens
分類:ラン科コケイラン属

国内では北海道、本州、四国、九州に分布している多年草です。

国外での分布は、南千島、カムチャッカ、樺太、朝鮮半島、ウスリー、中国大陸。

北海道では比較的観察機会の多いランで、平地~山地の林内で見られます。

名前の由来

コケイラン(小蕙蘭)の「蕙蘭(けいらん)」は、シラン属シラン(紫蘭)の古い呼び名で、コケイランの葉がシランに似ていて、花が小さい事が由来となっています。

コケイランの特徴

北海道の平地での花期は6月初旬〜中旬、高さが30㎝~40㎝ほどで、小さい花を総状につけます。

花のアップです。

3裂する唇弁は白色で、紅紫色の斑点が良く目立っており、側花弁にもまばらに斑点が見られます。

またよく観察しないと気付きにくいのですが、唇弁の基部に2つの隆起線(図鑑によっては副片と表記)があります。

側面のアップです。

コケイランの白い唇弁は横に張り出すように伸びているのが特徴で、先端が丸まります。

蕾の時期のコケイランです。

蕾は最初、花茎と同じ向きに直立し、花茎の下部から徐々に水平に開いていきます。

先ほどの写真のアップです。

花柄子房の付け根には、目立たないですが披針形の苞(ほう)が映っています。

上から見た蕾の時期のコケイラン。

渦巻くように開いていく感じに見えます。

蕾の時期は、花も蕾も両方観察できるので、お得感があります。

また別個体の写真。

花は下部から開花していくのが良く分かります。

白い唇弁にある紅紫色の斑点は、ほとんど目立たない個体もあります。

次に葉を見て行きましょう。

梅沢先生の図鑑では、葉身を縦に走る壁と表現されていますが、確かに溝の深い葉脈が目立ちます。

葉の根元の写真です。

コケイランの葉は、秋に偽球茎(ぎきゅうけい)から2枚の新葉を出します。

そのまま越冬して、翌年の花期が終わると枯れます。

※偽球茎はラン科において、地上茎の一部が肥大化して貯蔵器官となったもの

コケイランの葉は、ランの仲間にしては細長いのが特徴です。

コケイランは別名ササエビネ(笹海老根)とも呼ばれ、この細い笹のような葉が別名の由来となっています。

花茎には鞘状葉も見られました。

花期終盤のコケイラン。

花柄子房(かへいしぼう)がやや膨らみ始めています。

コケイランとトケンランの見分け方

コケイラン属は、コケイラン、コケイランモドキ、コハクランの3種がありますが、北海道ではコケイラン1種のみが自生しているので、見分けに困る事はあまりありません。

ですが、北海道では別属のトケンラン(道央に分布)が同時期に開花するので、見慣れていない方は少し見分けに戸惑うかもしれません。

トケンランとの違いを見て行きましょう。

花の比較

トケンランの花

まずはトケンランの花です。

がく片や側花弁には斑点が目立ちますが、唇弁の中裂片には斑点がありません。

コケイランの花

次にコケイランの花です。

斑点が目立つのは唇弁の中裂片で、がく片や背がく片には斑点がありません。

コケイランもトケンランも斑点が無い個体もあるので、次に解説する唇弁の向きが一番分かりやすいと思います。

トケンランの花

トケンランの白い唇弁は、途中まではずい柱にくっついて水平に伸び、途中から下に90度曲がります。

コケイランの花

コケイランの唇弁は横に張り出すのが特徴です。

先ほどのトケンランは唇弁が真下に伸びているので、違いが良く分かります。

  • コケイランの斑点は唇弁、トケンランの斑点は側花弁で目立つ
  • コケイランの唇弁は横に張り出し、トケンランの唇弁は真下に伸びる

葉の比較

コケイランの葉

コケイランの葉はあまりランの葉に見えず、やや細長いのが特徴です。

トケンランの葉

トケンランの葉は幅の広い長楕円形で、黒い斑点があります(※斑点が目立たない個体もある)

葉っぱを比較するとこの2種は似ていませんが、開花時期に葉が無くなっている場合もあるので要注意です。

全体像の比較

トケンラン

トケンランの花はややまばらにつくイメージです。

コケイラン

コケイランの花はトケンランに比べて密に花を付けています。

2種の違いまとめ
  • コケイランの斑点は唇弁、トケンランの斑点は側花弁で目立つ
  • コケイランの唇弁は横に張り出し、トケンランの唇弁は真下に伸びる
  • コケイランの葉は細く、トケンランの葉は長楕円形で斑点が目立つ
  • コケイランは花茎から花をやや密に付け、トケンランは花がややまばらにつく

私なりの見分け方をまとめてみました!

ご参考になれば幸いです。

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