北海道では5~6月の早い時期に見られる山野草「キバナイカリソウ」を今回ご紹介したいと思います。
とても特徴的な形状の花で、覚えやすい山野草の一つです。
キバナイカリソウとは
名称:キバナイカリソウ(黄花碇草)
学名:Epimedium koreanum
分類:メギ科 イカリソウ属
高さが20~30cmの多年草で、北海道の留萌以南~近畿以北の日本海側に多い植物です。
またアジアでは朝鮮半島にも分布しており、学名の由来となっています。
北海道では今までに、神居尻山、黄金山、殿様街道、北斗市毛無山で見た事があり、自生地では個体数もまずまず多いイメージの花です。
北海道内で自生するイカリソウ属の花は、この「キバナイカリソウ」1種類のみになります。
名前の由来
名前の由来は、その特徴的な花の形を、船の碇(いかり)に見立ててつけられました。
ちなみに、碇(いかり)とは、船を一定の場所に留めておくため、綱や鎖をつけて海底に沈めるおもりの事です。
出典:https://kotobank.jp/word/%E9%8C%A8-30058
確かに、碇(いかり)を反対にひっくり返したような花の形をしているのが分かると思います。
またイカリソウは淡いピンクの花ですが、本種の花色は黄色なので、「キバナイカリソウ(黄花碇草)」の名前になりました。
キバナイカリソウの特徴
開花直前のキバナイカリソウです。
まだ葉も丸まっています。
花は葉より下に、ぶら下がるような形で付きます。
花が開いたキバナイカリソウ。
本種はとっても変わった花の形をしていて、初めて見た時にはとても驚きました。
これだけ花がたくさん付いていると、距が触手のように見えて少し気持ち悪いですね。
細部を見て行きましょう。
十字型に開いた花弁とその先端にある距(きょ)がとても特徴的です。
がく片は花弁と重なる4枚と、花の後ろにつく4枚の合計8枚から構成されています。
ですが、花の後ろのがく片4枚は早くに脱落してしまいます。
まだ花が開く前のキバナイカリソウです。
早くに脱落してしまう、花の一番外側にある4枚のがく片が映っています。
脱落するがく片は、花弁に重なるがく片に比べて小さく、少し紫色が入るのが特徴です。
また別の角度から見てみましょう。
先ほどの画像だと分からなかったと思いますが、花弁は花の中心部から弧を描くように湾曲しています。
花弁の先端にある筒状の距(きょ)には、密(みつ)が入っています。
雄しべは画像だと見にくいですが、4本あります。
キバナイカリソウは、葉もとても特徴的です。
二回三出複葉(にかいさんしゅつふくよう)という葉の付き方で、3つの小葉からなる葉を付けます。
この3つでワンセットの葉が3つあるので、合計9枚の葉を付けるのが特徴です。
葉のふちには、刺状の刺毛(しもう)と呼ばれる鋭い毛がたくさん付きます。
葉の本体は切れ込み(鋸歯)が無いので、全縁の葉に刺毛(しもう)が付いて鋸歯縁に見える、といった表現が正しいのでしょうか。
神居尻山で見た個体は、葉が開いて間もなかったのか、葉の縁を中心に赤く色がついていました。
キバナイカリソウの花は葉より下側に付くので、この花を探す時には、まず葉を探す方が見つけやすいです。
葉の形もとても特徴的なので、比較的覚えやすいと思います。
葉の基部はハート型の心形(しんけい)で、葉脈は掌状脈(しょうじょうみゃく)と呼ばれる放射状に葉脈が走る形をしています。
11月の北斗市毛無山で、黄葉している葉を見つけました。
花も黄色なら、葉の黄葉も黄色になるんですね。
おすすめの山野草図鑑
北海道の草花 Wild Flowers of Hokkaido
著:梅沢 俊
北海道の植物図鑑では御馴染みの梅沢先生の図鑑です。
かなり大きめの図鑑ですが、網羅している植物数が多く、新分類体系APGⅢ,Ⅳに準拠しています。
古い植物図鑑をお持ちという方は分類が変わっているので、更新するならこの本がオススメです。
私の山のガイド活動にも欠かせないパートナーとなっています。
登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。
顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。
もしよろしければ、一緒に山歩きを楽しんでみませんか?