今回は、樺戸山地にある神居尻山をご紹介いたします。
標高こそあまり高くありませんが、お花がたくさん見られ、また札幌圏からも近いので登山者の多い山となっています。
もくじ
- 神居尻山とは
- アクセス・登山口
- 登山道の様子(取材日:20/06/15)
- 見られたお花(取材日:20/06/15)
- ツクバネソウ
- クルマバツクバネソウ
- タニギキョウ
- ハナニガナ
- ウメガサソウ(蕾)
- オククルマムグラ
- オオバノヨツバムグラ
- マタタビ
- タニウツギ
- サンカヨウ
- ユキザサ
- ミヤマガマズミ
- ツタウルシ
- コマユミ
- ヤマブキショウマ
- マシケレイジンソウ
- クルマユリ(蕾)
- ベニバナイチヤクソウ
- エゾユズリハ
- キバナイカリソウ
- コイチヤクソウ(蕾)
- オオバスノキ
- ムラサキヤシオツツジ
- オクエゾサイシン
- アカミノエンレイソウ(実)
- ノウゴウイチゴ
- ヒメゴヨウイチゴ
- シラネアオイ
- ハクサンチドリ
- マイヅルソウ
- オオアマドコロ
- オオバタケシマラン
- ザゼンソウ
- エゾイチゲ
- ツバメオモト
- カラマツソウ
- ゴゼンタチバナ
- ハイマツ
- コケモモ
- ツルシキミ
- シラオイハコベ
- エゾシオガマ
- キジムシロ
- チシマフウロ
- マルバシモツケ
- エゾカンゾウ
- クロツリバナ
- エゾノハクサンイチゲ
- タカネスイバ
- イワベンケイ
- オオカサモチ
- イワオウギ(蕾)
- ミヤマアズマギク
- コウゾリナ
- ミネカエデ
- ミヤマオダマキ
- ヨツバシオガマ
- キクバクワガタ
- ヒメナツトウダイ
- ツマトリソウ
- ヒメヤシャブシ
- ヒロハツリバナ
- ルイヨウボタン
- オオハナウド
- ヒメヘビイチゴ
- まとめ
神居尻山とは
神居尻山(カムイシリヤマ)は、標高946,7mの山で、樺戸山地の中でも豊富な高山植物と、低い標高ながらも展望の良さが人気となっています。
標高1000m前後の樺戸山地(かばとさんち)の中では北西方面に位置し、1990年(平成2年)に道民の森の造成に合わせて登山道が開削された、比較的新しい山になります。
登山道は、Aコース、Bコース、Cコースの3本があり、登りと下りでルートを変えられるのが魅力の一つです。
山名はアイヌ語で「神様の山」という意味。
アクセス・登山口
お手洗いは、Aコース利用の場合は手前の案内所の駐車場下にあるトイレを利用しましょう。
【案内所駐車場横にあるトイレ】
【Aコース登山口】
駐車場所はAコースを少し過ぎた先左手にあります。
【B・Cコース登山口】
BコースとCコースを利用の場合はこちらの駐車場&トイレを利用しましょう。
Bコースは道路を少し戻った側にあります。
Cコースは道路をさらに進んだ側にあります。
出典:https://www.dominno-mori.org/overview/details/post_2.html
道民の森に掲載されているMAPです。
登山道の様子(取材日:20/06/15)
今回はAコースから登り、Bコースを降りる事にしました。
全てのコース入口には入山届のBOXが設置されています。
わりとクマの出没が多いようで、2個も看板が立っていました。
熊が出るたびに看板を追加していったら、シーズン終わりには10個ぐらいになりそうな気がしますが・・・
ここの入山届は少し変わっていて、入山届と下山届を専用の箱に入れるようになっています。
ここで書いた下山届は無くさないように気を付けましょう。
個人情報がうるさい時代なので、このような配慮は嬉しい人も多いのではないでしょうか。
今回登りに使ったAコースは、3本ある登山道の中でも最長のコース。
コースタイムで登り2時間40分(休憩なし)ですが、尾根伝いに徐々に標高を稼ぐので、比較的登りやすい印象です。
新緑からすっかり木々も緑色に変わり、良く茂った森の中を進みます。
序盤は傾斜も緩やかです。
ツタウルシの上に「エゾハルゼミ」がいました。
この時期の森の中はエゾハルゼミの鳴き声がうるさいほどに響いています。
ここにもクマの注意喚起の看板が。
少し展望の開けた場所では、綺麗な三角形の黄金山(739m)が良く目立っていました。
ほとんど視界の利かない森の中、お花を探しながらゆっくりと登ります。
所々にある朽ちた看板類は、もう何が書いてあるかほとんど分かりません。
登山道脇を彩る「タニウツギ」のピンクの花。
この看板はもう文字が消えて真っ白になっています。
B・Cコースに比べれば少ないですが、このAコースにも階段の箇所があります。
階段はこの神居尻山の名物みたいなもので、急な登りの箇所には良く設置されています。
また階段の幅が狭く、足を置くスペースの無いこともたまにあります。
標高520m付近で、林道とぶつかる箇所があります。
迷い込まないように、ロープでしっかり区画されていました。
アップダウンを繰り返しながら、徐々に標高を上げていきます。
標高600m付近にある長い階段の急登。
標高660m付近には少し開けた場所の休憩適地があります。
標高が上ってくると、ダケカンバも出てきます。
木々の隙間からピンネシリ(1100m)が見えました。
標高が高くなり、足元にはハクサンチドリが目立つようになります。
ダケカンバの大木と、その下にはオンコの木。
樹林帯の看板はもう読めないものがほとんどでしたが、稜線上に立っていたこの看板ははっきりと文字が分かりました!
稜線上の方が劣化が早そうですが、同時期に作られたものでは無いのでしょうか・・・。
山頂を見ながら、稜線上を進みます。
今は廃道となってしまった、ピンネシリ側の登山道との分岐です。
ここまで来ると山頂までもうすぐです。
標高の低い神居尻山ですが、谷が深いため、高度感のある稜線歩きです。
建て替え途中の避難小屋。
新築の避難小屋は、今年の令和2年8月に完成予定だそうです。
稜線から振り返って、避難小屋とその向こうにピンネシリ。
斜面をのぞき込むと、ハクサンボウフウ、チシマフウロのお花畑がありました。
この後すぐに山頂に到着、密を避けるため、即Bコース側へ下山しました。
Bコース側に降りると、お花の種類が変わり、様々なお花畑が見られました。
ゆっくりと花を見ながら下っていきます。
ヨツバシオガマ、ミヤマアズマギク、エゾノハクサンイチゲなど、Aコースでは見られなかった花が出てくるのが嬉しいポイントです。
遠くにイワオウギの群落。望遠レンズのカメラや、双眼鏡があるとより楽しめたかもしれません。
標高点842mは、BコースとCコースの分岐となっていて、少し広いので休憩にもピッタリです。
あまり役に立たないパノラマ景観図がありました。
ちょうど雲が晴れて、増毛山地の展望が良好でした。
看板が役に立たないので、自分で名前を入れてみました。
行かれる際はぜひ参考にしてみて下さい。
増毛山地は日本海が近いので、積雪量が豊富でまだまだ斜面に雪渓が見られますね。
樺戸山地は意外と内陸側に寄っているので、そこまで雪が多い場所ではありません。
美しい増毛山地を眺めながら、急斜面を下っていきます。
樹林帯に入っても、急な下りが続くので、意外と気が抜けません。
階段がウネウネと斜めになっています。
Bコースは急傾斜ですが、最短コースなので意外とすぐ登山口に到着出来ます。
転落さえ気を付ければ、一番お手軽なコースです。
入山時に書いた下山届をここに入れて、最後は車道を10分程歩けばAコースの駐車場まで戻れます。
見られたお花(取材日:20/06/15)
花の種類も多い神居尻山。
たくさん撮影できたので、順番に掲載していきます。
ツクバネソウ
ツクバネソウはAコースの樹林帯で良く見られました。
クルマバツクバネソウ
Aコース樹林帯で、たくさん見られました。
ちょうど枯死する時期だったようで、たくさんの枯れかけの個体が見られて、個人的には大満足でした。
タニギキョウ
タニギキョウは、写真とってもピンボケしやすい花。
とても小さな白い花を付けますが、わりと群生している事が多いです。
ハナニガナ
見つけたのはAコースの樹林帯で1株だけでした。
ウメガサソウ(蕾)
Aコースの樹林帯でいくつか蕾の状態が見られました。
去年の種の残りが目立っています。
この感じだと、6月下旬頃には咲いているのでしょうか?
オククルマムグラ
クルマバソウとの見分けがややこしい種類です。
花がスープ皿状になっているのがポイント。
オオバノヨツバムグラ
ややこしいムグラシリーズ。
エゾノヨツバムグラの変種で、葉の先が尖るのがポイント。
マタタビ
葉の下に花が付くため、あまり目立ちません。
タニウツギ
Aコースで良く見られました。
ピンク色の花が良く目立ちます。
サンカヨウ
下部の樹林帯ではすでに種になっていましたが、標高を上げると花が何株か見られました。
紫色に変わっていく色の変化が面白いです。
ユキザサ
登山道脇で見られましたが、山菜好きな方に採られずに生き残っていました。
ミヤマガマズミ
渋い雰囲気のあるミヤマガマズミ。
葉の質感が好きです。
ツタウルシ
この時期はあんまり歓迎されないツタウルシ。触るとかぶれる要注意な植物です。
ツタウルシは雌雄異株で、写真のは雄花(おばな)です。
コマユミ
可愛らしい小さな花を付けていました。
枝に顕著な翼(よく)があるものを「ニシキギ」、無いものを「コマユミ」と言います。
ヤマブキショウマ
ヤマブキショウマは咲き始め。
地味な花ですが、近くで見ると綺麗です。
マシケレイジンソウ
エゾノレイジンソウの近似種で、樺戸・増毛山地の固有種です。
花柄の開出毛(かいしゅつもう)と、距が太くて長いのがポイント。
クルマユリ(蕾)
クルマユリはまだ蕾の状態でした。
見つけられたのはこの1株だけ。
ベニバナイチヤクソウ
ベニバナイチヤクソウは咲き始め。
Aコース樹林帯で見られました。
エゾユズリハ
エゾユズリハは雌雄異株で、雄の木と雌の木が並んで咲いていました。
キバナイカリソウ
キバナイカリソウは、神居尻山を代表する花の1つです。
お花はほとんど終わっている株が多く、この花目当てならもう少し早い時期の方がオススメです。
ギザギザの葉の下にある花を丁寧に探して、数株だけ花を付けているものが見つかりました。
コイチヤクソウ(蕾)
まだ咲いていませんが、咲いていてもあまり見た目が変わらないつぼ型の花を付けます。
花期は7~8月なので、咲くのはもうちょっと先になります。
オオバスノキ
ウスノキとの見分けがいつもややこしくなります。
がく筒に陵が無いのがオオバスノキです。
ムラサキヤシオツツジ
数株だけ咲いているものがありました。
時期的にはシーズン終わりですね。
オクエゾサイシン
Aコースではこのオクエゾサイシンが良く見られました。
普段は下向きになる花が上向きになっていたのが不思議でした。
アカミノエンレイソウ(実)
わりと高山で見られるアカミノエンレイソウ。
エンレイソウは実の色で、アオミノエンレイソウ、クロミノエンレイソウ、アカミノエンレイソウに分けられます。
ノウゴウイチゴ
花弁は7枚、3出複葉、花の下にまだ熟していない緑色のイチゴが映っています。
ヒメゴヨウイチゴ
葉が特徴的で目立ち、7枚の花弁が平開しないのがヒメゴヨウイチゴです。
コガネイチゴにも似ていますが、こちらは花がしっかり開きます。
シラネアオイ
Aコース上部では、普通に咲いている個体が多く見られました。
Bコースでは花は無く、既に種になっていました。
ハクサンチドリ
Aコース稜線上ではたくさん咲いていました。
ピンク色の花が良く目立ちます。
マイヅルソウ
マイヅルソウも至る所で見られました。
オオアマドコロ
ネマガリタケの下に咲いていたオオアマドコロ三兄弟。
Aコース稜線にあったこの個体はまだまだ元気でしたが、下部の樹林帯は枯れかけの個体が多かったです。
オオバタケシマラン
葉の下に花を付けるので、目立たないオオバタケシマラン。
葉は先ほどのオオアマドコロに似ていますね。
ザゼンソウ
Aコース上部の稜線上で見られました。
葉が良く目立つので、下をのぞき込むと花を見つけられました。
エゾイチゲ
下部の樹林帯ではすでに種でしたが、上部ではまだまだ咲いていました。
ツバメオモト
とても人気のあるツバメオモト。
Aコース上部で見られました。
カラマツソウ
白い花が可愛いカラマツソウ。
Aコース上部にて。
ゴゼンタチバナ
Aコース稜線で普通に見られました。
ハイマツ
ハイマツの雌花(めばな)は、今年枝の枝先に紅紫色の花を付けます。
写真はほとんど見切れていますが、雄花は今年枝の基部についています。
雌雄同株ですね。
コケモモ
Aコース稜線上で見られました。
ツルシキミ
Aコース稜線上に一株だけ咲いているのがありました。
シラオイハコベ
別名エゾフスマ。あまり見向きされない、地味な花です。
エゾシオガマ
稜線上で見られました。
キジムシロ
わりとどこでも見られるキジムシロ。
チシマフウロ
稜線上では普通に見られ、斜面ではお花畑を形成していました。
マルバシモツケ
マルバシモツケは咲き始めでした。
エゾカンゾウ
Aコース稜線で咲いていました。
避難小屋のブルーシートをバックに。
クロツリバナ
花が良く目立つクロツリバナ。
本種は他のツリバナ類との見分けが楽で嬉しいです。
エゾノハクサンイチゲ
好きな高山植物の一つです。
タカネスイバ
地味な花の代表ですね。
お花は意外とピンク色で可愛らしいです。
イワベンケイ
イワベンケイは雌雄異株で、雄株と雌株が近くで見られました。
岩が露出している場所で、たくさん見られました。
オオカサモチ
白い大きな花を付けるオオカサモチ。
稜線上で咲いていました。
イワオウギ(蕾)
イワオウギは登山道脇のものは蕾しかありませんでした。
近寄れない崩壊地の斜面には群生しているものもありました。
ミヤマアズマギク
B・Cコース側に下った稜線上で良く見られました。
コウゾリナ
コウゾリナは登山道脇の物は全てつぼみでしたが、遠くの斜面には咲いている個体がありました。
ミネカエデ
ミネカエデはちょうど綺麗に咲いている個体がありました。
ミヤマオダマキ
ミヤマオダマキは咲く前のつぼみの時期もなかなか綺麗です。
ヨツバシオガマ
Aコース側ではまったく見られませんでしたが、B・Cコース側の稜線上で見られました。
キクバクワガタ
Aコース側ではまったく見られませんでしたが、B・Cコース側の岩場で咲いていました。
この花は花期も終盤ですね。
ヒメナツトウダイ
稜線上の草地に一株だけ咲いているのを見つけました。
ツマトリソウ
地味に咲いている事が多い花ですが、ここのはまとまって咲いていたので見ごたえがありました。
ヒメヤシャブシ
この樺戸山地の雪崩斜面に多く生息しているヒメヤシャブシ。
この神居尻山の稜線上では良く群生していました。
ヒロハツリバナ
見分けがややこしいですが、花弁4枚は「ヒロハツリバナ」です。
ルイヨウボタン
Bコース樹林帯で。
ルイヨウボタンはほとんどシーズン終わりですね。
オオハナウド
外周の花弁は大きく先が2裂するのがポイントです。
ヒメヘビイチゴ
最後の林道脇で群生していました。
この時期、林道歩きをしていると良く目にする花です。
まとめ
- 3本あるコースを使って縦走を楽しもう!
- A~Bコースの縦走は、見られる花の種類が変わってオススメ
- 階段が多いので、転落事故注意
最後まで御覧いただき、ありがとうございました。
登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。
顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。
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