秘境駅で有名な小幌駅と礼文華山道を効率よく歩けないかと思い、今回は礼文駅を起点としたルートで歩いてみる事にしました。
名付けて「小幌礼文華ロングトレイル」をご紹介いたします。
※勝手に名前をつけただけなので、日本ロングトレイル協会とは何の関係もありません。
ルート全体図
距離約14㎞、累積標高は登り870m、下り930m、今回はゆっくり歩いて約7時間の行程でした(休憩含む)。
JR小幌駅からスタートして国道230号線まで登り、今度は礼文華山道を西から東へ縦走してJR礼文駅を帰着としたコースです。
小幌トレイル編(取材日2019/6/2)
まずはJR礼文駅前に車を駐車して、室蘭本線(長万部行き)8:30発のワンマン列車に乗車します。
※2019年6月1日時点のダイヤです。最新の時刻表をご確認ください。
なかなか個人的には乗る機会の無い、ローカル線のワンマン列車です。
先頭車両から乗車します。
片道8分、料金は220円です。
トレイル起点の小幌駅到着です。
2つのトンネルの間にある、なんだか秘密基地のような趣のある駅でした。
駅の脇にバイオトイレが設置されていました。
ちなみに礼文駅にはトイレが無いので、実質はここが最終トイレとなります。
歩き始めてすぐに、岩屋観音と文太郎浜の分岐があります。
ここは岩屋観音方面に進みます。
かつて海の近くには漁師が住んでいたそうで、道沿いに多いミツバやヤマグワはその名残でしょうか。
広葉樹の中の快適な道が続きます。
花期は逃してしまいましたが、シラネアオイの葉がたくさん見られました。
ウリノキもいくつか道沿いに見る事が出来ました。
葉が特徴的で、白く可愛らしい花が垂れ下がる樹ですが、今回は残念ながらまだつぼみでした。
朝露で濡れたオオアマドコロが咲いていました。
大ぶりな花をたくさんぶら下げ、とても目立っていました。
スポットライトを浴びているノビネチドリに出会いました。
広葉樹林の隙間から日が差し込み、素敵な被写体になってくれました。
しばらく進むと、岩屋観音のある海岸への下り道になります。
海が見えるとまもなく海岸に到着です。
海岸にまで降りると、そこは周囲を崖に挟まれたプライベートビーチのような空間でした。
まさに漁師の隠れ家といった雰囲気です。
崖の横穴に鳥居が建てられており、その中に岩屋観音がありました。
一六六六年、僧円空が、この洞くつで仏像を彫って安置した。修行の僧が、熊に襲われこの仏像の後ろに隠れて、難を逃れた。仏像の首を熊に食いちぎられて以来「首なし観音」と言われてきた。一八九四年、泉藤兵衛により首は修復された。と伝えられている。祭礼は、九月16日、17日に行われる。
出典:豊浦町教育委員会(現地の看板)
仏像の首を食いちぎるクマなんて恐ろしい逸話が残されているんですね。
ここからは国道方向に向けて、沢沿いの登りが始まります。
渓流沿いのさわやかな登山道です。
ズダヤクシュの可愛い花が咲いて居ました。
ズダ(長野の方言で喘息のこと)薬種で、かつては喘息の薬として使われていた薬草です。
こちらはホウチャクソウです。
寺院の軒にぶらさがっている宝鐸(ほうちゃく)と垂れ下がっている花が似ていることが名前の由来です。
先ほどのオオアマドコロと似た花ですが、こちらは枝先に1~3個の花がまとまって付くのが特徴です。
登りの途中、大きな虚(ウロ)をもつトチノキの老木と出会いました。
大きな口を開けた『木のおばけ』のような巨木です。
恐るおそる中をのぞくと、空洞はずっと上の方まで続いていました。
樹木の中心部は心材といった「細胞が死んだ部分」で、中が腐ってなくなっていても樹は元気に育っていきます。
実際に生命活動をしているのは、周辺の辺材部分になります。
人間中身が大事とはよく言いますが、樹木はどちらかといえば外見重視なんです。
足元にはバラバラになった、トチノキの花が落ちていました。
トチノキの花は円錐花序といって、一本の軸から柄を持った花が多数つき、円錐状になります。
先ほどの写真のように、バラバラになって足元に落ちていると一見なんの花だがわからなくなります。
途中、林道と合流すると岩屋観音方面の案内看板が立っています。
国道側から来た方にはわかりやすい看板ですが、逆方向から来ると、どちらが国道への道かわかりません。
ここは西側に進路をとるのが正解です。
林道沿いにミツバウツギの花が咲いていました。
白く可愛らしい花は匂いも良いので、ぜひ見つけたら嗅いでほしい木です。
国道230号(37号と重複区間)に出たら、ここから礼文華山道の入口までは徒歩20分程の車道歩きが始まります。
車の交通量が多いので、歩行の際は気を付けましょう。
礼文華橋と小幌橋の2つの橋を超えると、右手に礼文華山道の入口があります。
途中、法面に鉄製の立派な階段がついており、ショートカット出来るかと思いチャレンジしましたが、ダメでした。
ここは大人しく、車道を歩いて入口まで向かいましょう。
礼文華山道編(取材日2019/6/2)
国道230号沿いに、礼文華山道の入口があります。
過去には入口に案内看板もあったようですが、訪れた時は何も無かったので、見落とさないよう注意が必要です。
江戸時代から明治初期にかけて、「猿留山道」・「雷電山道」とともに蝦夷地の三大難所のひとつに数えられていた。地元では、実際の山道の部分を「礼文華山道古道」、旧国道(林道部)を「礼文華山道」と呼び分けているようです。
入口はこのような舗装路になっています。
ここを左に折れると林道歩きが始まります。
しばらくは昭和41年まで実際に使われていた旧国道を歩きます。
天然ミツバの上に、エゾハルゼミがとまっていました。
6月に入りすっかり初夏の光景ですね。
それにしても、林道歩きなのに藪が濃い。
日曜日だというのに、貸し切り状態でほとんど歩かれていないのでしょうか。
ダニも多く、また林道上はぬかるみも多いので、黙々と歩を進めました。
別の林道と合流する広場に到着しました。
ここでようやく一息つくことが出来たので、のんびりお昼ご飯タイムにしました。
ここから急激に林道が良くなりました。
先ほどまでの藪の濃い道と大違いで、とても快適に歩けます。
いよいよ礼文華山道古道の看板が出てきました。
ここでようやく山道になります。
林道歩きが長かったので、待ちにまった古道歩きです。
とても歩きやすい道です。
楽しみにしていた古道歩きは200Mほどで、あっという間に終わってしまい、また林道に合流しました。
しばらく林道を歩いていると、左手に山道から降りてくる合流点が見えてきました。
これは何か変だと思い、この山道を登り返してみると、どうやら先ほどの古道から林道に合流した箇所に、また古道の入口がある事が判明しました。
これだけ生い茂っていると、この先に道が続いているなんて思わないですよね。。。
案内看板類がほとんどないので、行かれる方は要注意です。
礼文華古道区間の私が歩いたGPSログです。
黒の点線部が林道で、そこをショートカットするように古道がついています。
先ほど私が間違えた箇所は、地図のA地点になります。
気持ちを切り替えて、再度林道を進みます。
左手にピンクテープのついている分岐があり、ここから再度古道が始まります。
先ほどの写真のB地点になります。
植林地帯で、先ほどまでとはまた違った風景が広がります。
ウドが至る所に生えてました。
これだけの数があれば人気の山菜取りコースになりそうですが、いまだに人と会いません。
開けた崩壊地のような斜面をジグザグに下ると、古道の終点です。
ここからは道路を歩いて、礼文駅まで歩きます。
徒歩で35分程の道のりです。
鉄路沿いの道路をのんびり歩きます。
アスファルトの上を登山靴で歩くのは、なかなか疲れます。
礼文駅に到着でゴールです!
行きも帰りも人の気配が無い駅でした。
まとめ
・1日で小幌駅と礼文華山道を楽しめる良コース
・JR利用でリーズナブルに縦走できる
・ミツバとウドは採りきれないぐらい生えていた。