今回は「サルメンエビネ」をご紹介したいと思います。
森の中で出会うと嬉しいお花の一つです。
サルメンエビネとは
名称:サルメンエビネ(猿面海老根)
学名:Calanthe tricarinata
分類:ラン科エビネ属
国内では北海道から四国、九州まで広く分布している多年草です。
国外での分布は、中国西南部、台湾、ヒマラヤなど。
北海道内でもよく見られるラン科の代表種で、華やかな見た目もあって人気のお花です。
名前の由来
赤茶色の唇弁を、「猿の顔に見立てた」のが名前の由来とされています。
個人的には全く猿の顔に見えませんが・・・。
また能面の一つ「猿面」が由来という説もあります。
サルメンエビネの特徴
サルメンエビネを見つけるのは、この越冬葉を探すのが分かりやすいと思います。
これは昨年の花期に展開した葉で、そのまま枯れずに越冬して残っています。
葉の長さは15㎝~25㎝、幅は6~8cmの倒披針形。
濃い緑色なのが特徴的です。
これは5月頭に撮影したサルメンエビネの芽生えです。
葉に包まれた中に、花の蕾がちらっと見えています。
サルメンエビネの花茎が徐々に伸びてきました。
花茎の下に見える葉も、まだ開く前です。
北海道での花期は5~6月。
高さが30㎝~50㎝と大きな花なので、森の中で咲いている時はとても良く目立ちます。
葉は2~4個つきます。
花期に入っても、越冬葉が足元に良く目立っています。
花のアップを見て行きましょう。
ラン科特有の3個のがく片(側がく片、背がく片)、3個の花弁(側花弁、唇弁)で構成されています。
サルメンエビネ最大の特徴が、この皺(しわ)のある赤茶色の唇弁になります。
花の上部には葯帽(やくぼう)があり、これは花粉塊の外側を包む蓋状(帽子状)のケースになっています。
唇弁の表側には、3条の隆起したヒダがあり、とても独特な見た目になっています。
花の後方からのアップです。
がく片も大きく目立つので、とても優雅な印象を受ける花です。
ランの花は、花柄と子房の境目が明瞭でないので、「花柄子房(かへいしぼう)」と言います。
側面からのアップです。
あまり目立ちませんが、苞葉(ほうよう)が映っていました。
ずい柱とは、ラン科に良く見られる「雄しべと雌しべが合体したもの」で、その先に葯があります。
サルメンエビネには距(きょ)が無いとされていますが、横から見ると明らかに後方へ出っ張っている部分があります。
サルメンエビネは蜜を作らないので、これは距では無いという事なのでしょうか?
次は斜め後方からのアップです。
唇弁の表側はヒダがあって複雑な形状をしていますが、裏側はスッキリとした平らな形状です。
暗い森の中、木洩れ日が当たってピカピカに発光した「サルメンエビネ」です。
なんだか神々しいですね。
サルメンエビネは蜜を作らないので、この派手な見た目で虫達をおびき寄せています。
こちらはまだ背がく片や側花弁が開ききっていない「サルメンエビネ」。
なんだか可愛らしい印象を受けます。
猿の顔には見えませせんが、個人的には、「スカートを履いた妖精」のように見えます。
サルメンエビネの花は、下から開花していきます。
この個体は、まだ上部につぼみが残っています。
つぼみのアップ写真です。
花はがく片にしっかりと包まれています。
わりと目につきやすいサルメンエビネですが、藪の中に咲いていると意外に目立たない事もあります。
笹とオオカメノキに隠れるように咲いていました。
花茎の茎は太くてしっかりしています。
エビネの仲間の中ではもっとも北方まで分布する種の一つで、寒い地方では群生しやすく、暖かい地方では点在する傾向があるとされています。
おすすめの山野草図鑑
北海道の草花 Wild Flowers of Hokkaido
著:梅沢 俊
北海道の植物図鑑では御馴染みの梅沢先生の図鑑です。
かなり大きめの図鑑ですが、網羅している植物数が多く、新分類体系APGⅢ,Ⅳに準拠しています。
古い植物図鑑をお持ちという方は分類が変わっているので、更新するならこの本がオススメです。
私の山のガイド活動にも欠かせないパートナーとなっています。
登山・ハイキング倶楽部では、登山ガイド・森林インストラクターの橋本竜平がご案内する、会員制のガイドツアーを実施しております。
顔が見える範囲の少人数制で、自然を楽しみながら歩くことを目的として立ち上げた倶楽部です。
もしよろしければ、一緒に山歩きを楽しんでみませんか?