エゾゴゼンタチバナとは
名称:エゾゴゼンタチバナ(蝦夷御前橘)
学名:Cornus suecica
分類:ミズキ科 ミズキ属 ゴゼンタチバナ亜属
北海道の道東や道北の湿原、高山草原に生える常緑の多年草です。
名前の通り、日本国内では北海道のみに分布しています。
冷温帯と亜寒帯に分布する種で、ユーラシア北部や北米の北東部と西部にも分布があります。
詳しく見ると北米地域では大まかに分けて下記の通りです。
- アラスカ(アメリカ)
- ブリティッシュコロンビア(カナダ)
- カナダ東部(ラブラドール、ニューブランズウィック、ニューファンドランド島、ノバスコシア、ケベック)
- グリーンランド(デンマーク領)
名前の由来
ゴゼンタチバナに似て、北海道に分布することが名前の由来です。
ゴゼンタチバナは、石川県にある白山の最高峰「御前峰(ごぜんがみね)」で発見され、赤い実がカラタチバナ(百両)に似ている事が由来となっています。
本種の英語名は「Eurasian dwarf cornel(ヨーロッパの矮性コーネル(ミズキ属の総称)や、bunchberry(バンチベリー)」。
ドワーフは小人の印象が強いですが、小さい動物、矮性(わいせい)植物、盆栽などの意味もあるんですね。
ちなみに、似ているゴゼンタチバナの英語名は「Canadian dwarf cornel(カナダの矮性コーネル(ミズキ属の総称)」です。
種間雑種
ヒースや湿原に咲く「エゾノゴゼンタチバナ」と、森に咲く「ゴゼンタチバナ」は、アラスカやラブラドール、グリーンランドでは近い場所で生育して、「western bunchberry」という名の雑種(Cornus × unalaschkensis) ができる事があります。
写真は英語版wikipediaさんからお借りしました。
北海道でも近い位置で生息している事がありそうですが・・・。
データ・研究不足なのか、北海道ではうまく住み分けが出来ているという事なのでしょうか。
エゾゴゼンタチバナの特徴
ゴゼンタチバナと同様に根茎が伸びるので、自生地では群生した姿が見られます。
白い花弁のように見えているのは総苞(そうほう)で葉が変形したものです。
中心部に見えている黒いのが花で、この写真の個体はまだ花を咲かせていません。
葉は対生で3~5本の平行脈です。
まだ完全に葉を開いていないエゾゴゼンタチバナです。
花は同じミズキ科のヤマボウシやハナミズキを小さくしたような見た目をしています。
花のアップです。
ガンコウランの葉が隣にあると、サイズ感が分かりやすいですね。
これも開花前ですが、咲くと4枚の黒い花弁が開きます。
これは開花したばかりのエゾゴゼンタチバナです。
花弁は少し小さくて分かりにくいですが、複数の雄しべと雌しべの花柱が分かると思います。
ウラシマツツジに囲まれて咲いていたエゾノゴゼンタチバナです。
可愛い雰囲気が出ていてお気に入りの一枚。
次に果実を見ていきましょう。
果実は球形で赤く熟します。
写真を見ると分かりますが、すべてが結実するわけではないようです。
残存花柱が少し実の先から飛び出ています。
芽生えたての「エゾゴゼンタチバナ」です。
葉の平行脈が良く目立つので、花が付いていなくても分かりやすいですね。
ゴゼンタチバナとの違い
あまり見分けに困る事は無さそうですが、同属のゴゼンタチバナとの違いをまとめてみました。
- ゴゼンタチバナは葉が6枚輪生状
- ゴゼンタチバナの花は中心部が白~クリーム色
- エゾゴゼンタチバナは分布が局所的
果実は見比べてみましたが、ほとんど違いが分かりません。
果実期は少し見分けが難しくなりますが、葉が十字対生なので良く見ると一目瞭然ですね。
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